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国際的な評価を得られない日本のデータセンターをどうする?

JDCCが海外に発信した震災時のデータセンターの実態

2012年03月16日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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3月15日、設立3周年を迎えた日本データセンター協会(以下、JDCC)はセミナーに先立ち、記者発表会を行なった。発表会では、東日本大震災の際の日本のデータセンターの実態が報告されたほか、節電・ピーク制御への貢献、情報発信の加速、人材育成などの施策が披露された。

大震災でもサービスは止まらなかったが……

 JDCCは「IT立国の基盤を支えるデータセンターのあるべき姿を追求する」ことを目的に設立されたNPO法人。発表会では、JDCC理事/運営委員長の東京大学大学院 情報理工学系研究科教授 江崎浩氏が活動成果と2012年の重点活動について説明した。

JDCC理事/運営委員長の東京大学大学院 情報理工学系研究科教授 江崎浩氏

 冒頭、江崎氏からは設立3周年を迎えた現在(3月15日)で、正会員が100社を突破したことが報告された。設立された当初の44社から倍増しており、データセンターが社会インフラの1つとして認知されたこともあり、「特に東日本大震災以降、入会が急増している」(江崎氏)という状況だという。

 直近の活動も東日本大震災に大きな影響を受けたようだ。まず、日本品質のファシリティ規格を定めた「データセンター・ファシリティー・スタンダード」を震災を踏まえた内容に改訂した。たとえば、震災や計画停電の影響で、非常用電源のための燃料や運転に必要な消耗品を調達できないという事態を受け、必要な燃料の確保量などは公的機関の方針が出た段階で見直しをかけるという。

 また、海外での講演により、日本のデータセンターの実態を正しく伝えたことも重要な活動だったという。江崎氏によると、東日本大震災の影響や被害について、海外では情報が少なく、日本のデータセンターは壊滅したと思われていたとのこと。しかし、実態は日本のデータセンターは高い耐災害技術や日常の訓練により、ほとんどがサービスを継続した。「津波でなくなったところ以外、あの震災でもサービスが止まっていない。これは米国にとってみれば、『驚嘆』としか言いようがない出来事だ」と、日本の災害対策のレベルを高く評価。そして、この実態や災害対策のノウハウを昨年のData Center Dynamicsのイベントにおいて、JDCCのメンバーが講演し、多くのメディアやブログで取り上げられたことを挙げた。

海外の講演で日本のデータセンターの実態を伝える

 しかし、こうした実態とは裏腹に、日本はデータセンターの立地として国際的な評価を得られていないのが現状だという。江崎氏はData Center Dynamicsの「Data Center Risk Index」という指標を引き合いに出し、「自然災害や電気料金の高さなどから、20カ国中19位に甘んじている」と指摘。特にエネルギーコストは評価ウェイトが高く、自然災害に関しては最下位となる評価で、政治的安定性やインフレなどの高い評価の足を引っ張っている状況だという。これに対しては、前述したレベルの高い災害対策など正しい情報発信を進めるほか、災害対策の実施、節電などの施策を通じてマイナス評価を払拭し、国際競争力の強化につなげると抱負を述べた。

都内のサーバーの3/4はまだオフィス内設置

 また、2012年は「節電・ピーク制御への貢献」を活動の1つの柱とする。江崎氏は、節電マニュアルやFAQを提供したり、IT機器自体の省エネから、ITを使った効率的な省エネへの移行を進めたり、電力供給者や政府との連携を深めていくと説明した。さらにオフィスからデータセンターへのサーバー移行自体が省エネにつながるという。JDCC理事長である兵庫県立大学特任教授の白石功氏は「都内のサーバーのうち3/4はいまだにオフィス内に設置されている。これをエネルギー効率の良いデータセンターに移せば、電力消費は15%減る。仮想化を進めれば、さらに25%減る」と述べた。

JDCC理事長 兵庫県立大学特任教授、大阪大学名誉教授 白石功氏

 もちろん、日本でのデータセンターはコスト面でも課題がある。これに対して江崎氏は、「安い代わりに低クオリティでは、地震に耐えられない。日本車のように高くても買いたいと思わせる必要がある」と、コストと品質のバランスをとっていくことが重要だと述べた。

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