ヒットの秘訣はない。けれど、やることはある
―― 昨年は、ヒットが連発しましたね。なぜ当たったのだと思いますか。もし“ヒットの秘訣"みたいなものがあれば教えていただきたいのですが。
丸山 僕がたまに番組がうまくいったときに、記者さんからヒットの法則を教えてくださいという質問をいただいたりするんですけど、僕自身は正直、法則があまりわからないんです。作品を支持していただいた後に何が良かったかという分析ができたとしても、それは後出しじゃんけんみたいなもので、法則化できるものではないと思ってます。
たとえばマーケティング的な考え方で「このジャンルを好むこのターゲット層に向けて、この要素とこの要素を入れたら、ヒットする」とか、「このキャラクターデザイナーさんが手がけた作品は過去に何万本売れた」とか、そうしたことも少しは考えたりすることあります。
でも、そこからお客さんに届いてヒットするかどうかはまったく別で。100万部売れている原作をアニメにしたからといって、必ずヒットするかといったらそんなことはないですね。ヒットの本質は、マーケティングとは違うところにある気がしています。
―― 100万部原作であってもアニメにしたときはわからないと。ではヒットの本質とは何だと思いますか?
丸山 それは「見た人が感動した」ということに尽きると思います。ギャグものだったら楽しさ、恋愛ものだったら切なさとか甘酸っぱさ。見ている人にいろんな感情表現がわき出てくるのは、どこか心が動いたということだと思うんですよ。そしてその感動は、マーケティングでは作ることができない。人の気持ちを動かすことは、そんなに簡単じゃないと思います。
―― では、「感動」は何で作られると思いますか。
丸山 ほんと精神論になってしまいますが、スタッフの人たち、あるいはその周りで番組を支えている関係者の人たちの熱意や、作品に対する忠誠心ですね。自分はこれを作りたい、これを見てくれる人に楽しんでもらいたいという想い。計算してウケを狙うよりも、自分たちが面白いと思っているものを、見ている方にいかがでしょうかと提供して、一緒に楽しんでもらえるようにしたいと思って、とにかく一生懸命に創るという心がけですかね。
現場で本当に熱の高い作品を作って初めて、やっと予選を突破できて、その後の決勝大会で入賞、つまりヒットするかどうかというのは神のみぞ知るという。それぐらい人の気持ちというのは解読不能なものだと思います。
―― 最後はわからないんですね。
丸山 本当にわからないんです。僕はもう40本ぐらいの作品に参加させてもらっていて、毎回学んではいますけど、見ている方々に何を届けたら支持してもらえるのか、今でも法則なんかわからない。僕がダメなのか、それが真理なのかはわからないんですけど。
だから、現場や周囲の関係者の情熱が上がりきらないというときは、まず決勝大会にすら行けないと思ってます。
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