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「ソーシャルゲーム」だけじゃない

ECサイト改善に効くゲーミフィケーションのアイデア

2012年03月13日 15時00分更新

久保田 大海/NHK出版

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「ゲーミフィケーション」というキーワードを2011年ごろからよく耳にするようになりました。「また新しいバズワードか?」「Webサイトの制作や運営とは関係のない話だろう」と受け止めている方も少なくないかもしれません。Webサイトにとってのゲーミフィケーションとは何か? ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える(井上明人著)の編集を担当したNHK出版の久保田 大海氏が解説します。(編集部)

ゲーミフィケーションの2つの大きな流れ

Image from Amazon.co.jp
ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える

 ゲームクリエーター、Webディレクター、ECサイトやモバイルビジネスの担当者など、本をきっかけにたくさんの人に会うことで、ゲーミフィケーションについての考え方を深めてきました。

 その中で、ゲーミフィケーションには大きな流れが2つあることに気づきました。(1)従来の据え置き型ゲームの流れ、(2)ソーシャルゲームの流れ、の2つです。

 「(1)従来の据え置き型ゲームの流れ」は、ファミコンからプレイステーションといった家庭用ゲーム機が培ってきたゲームデザインのノウハウに関することです。MDA(Mechanics Dynamics Aesthetics)モデルをはじめ、レベルデザイン、アンロックなどの個別のゲームデザイン手法、さらにはユーザーインターフェイスから捉えたサイトウアキヒロさんのゲームニクス理論など、日本におけるゲームデザインのノウハウ蓄積は、言うまでもなく膨大です。

 もう1つの大きな流れである「(2)ソーシャルゲームの流れ」は、いわゆるユーザー行動の解析から生まれた知見と言ってもよいかもしれません。たとえば、Webサイト制作では、A/Bテスト(スプリット・ラン・テスト)でCTRやCVRの高い最適なバナーのデザインを選ぶ、よりソーシャルメディア上でコミュニケーションが生まれやすい仕組みを用いるなど、アクセスログが解析できるからこそ生まれたノウハウがあります。

 CTRやCVR、またはページビュー数などにゴールが向かっているのがWebサイトですが、それに対してゴールがアイテム課金など真っ直ぐマネタイズに向かっているのがソーシャルゲームです。ソーシャルゲームはPDCAのサイクルを「いかに稼ぐか」に向けて回しているのだと思います。Webやアプリで培われているノウハウと同じものがソーシャルゲームでも用いられており、ここがゲーミフィケーションを分かりづらいものにする最大の理由でしょう。

 ゲーミフィケーションは、この2つの流れを1つの大きなトレンドに包含したものとして存在しています。「ソーシャルゲームのノウハウを応用するのがゲーミフィケーションだ」というのは誤った理解です。ゲームデザインのノウハウについては、当然ながら据え置き型ゲームに多くの蓄積があります。まずはその整理が必要なのではないでしょうか。

ゲーミフィケーションをフレームワークとして使う

 2つの流れで整理を進めると、ゲーミフィケーションはWebサイトやアプリ制作の延長線上にも存在するものだと考えることができます。では、あらためてWebサイト制作にとってゲーミフィケーションの何が新しいのでしょうか?

 1つはシンプルにゲームデザインを応用することです。ユーザーインターフェイスについてはWebサイト制作のなかでも多くのノウハウが蓄積されていますが、よりリッチでグラフィカルなユーザーインターフェイスについては、据え置き型ゲームの数十年にわたる膨大なノウハウがあります。「シンプルさ」「表現性」はもちろん、私はユーザー(プレイヤー)の「学習曲線」に基づくインターフェイスデザインのノウハウが新しいのではないかと考えています。

 もう1つは「フレームワーク」としてゲーミフィケーションを活用することです。こちらは事例を見ましょう。昨年の「TechCrunch Disrupt」(米ブログメディアTechCrunchが主催するスタートアップ企業の登龍門)でデビューし、累計267万ドルの投資を受けて急成長するECサイトSneakPeeqです。

ゲーミフィケーションのノウハウを利用しているECサイト「SneakPeeq」

 創業者のHenry Kim氏は「ECサイトには問題がある。それはユーザーが購入するときにしか訪れない点だ」と述べ、どのようにすればユーザーが頻繁に訪れるかを考えました。そのために「ゲーミフィケーションのノウハウを用いた」と言います。

 実際にサイトを利用してみると、Kim氏が言うことがよく理解できます。たとえば、ソーシャルゲームのフレームワークに「アポイントメント・ダイナミクス(Appointment Dynamics)」というものがあります。アポイントメント・ダイナミクスとは、時間が経ってからゲームに戻るとゲージが回復していてまたプレイができる、しばらくアクセスしないと花が枯れてしまうといった、特定の時間内に定められた場所に戻る行動をユーザーに促す手法です。SneakPeeqでは、この手法がうまく用いられています。

 驚くことにSneakPeeqでは、ECサイトにも関わらず商品ページに価格がありません。ユーザーは「Peeq(のぞく)」することで、初めて商品の価格を知ることができます。

 最初に与えられる「peeq」の回数は1日20回。20回を超えて、さらに商品の価格を知りたければ明日また来なければなりません。わざわざ「peeq」の回数を限ることで商品を売るチャンスを逃しているように思えますが、そこはビジネスモデルの違い。SneakPeeqは商品数を限定したフラッシュマーケティング(期間を限定して割引価格などの特典をつけて商品を提供する販売方式)なのです。48時間、72時間など時間を限定して商品を売り切ります。このように、「アポイントメント・ダイナミクス」を利用することで、「ユーザーが頻繁に訪れるECサイト」を作ったのです。

 SneakPeeqで利用されているゲーミフィケーションのフレームワークはこれだけではありません。詳しくは3月17日(土)のイベント成功するWebサイト戦略手法ゲームニクス&ゲーミフィケーションでお話しますが、Webサイトへユーザーに戻ってきてもらう手法として「アポイントメント・ダイナミクス」はあらゆるWebサイトに利用できるフレームワークではないでしょうか? そのほかにも、プレイ&フィードバックデザイン、レベルデザイン、ステータスの可視化、ソーシャルアクションなど、ゲーミフィケーションのフレームワークはWebサイトでも活用できるはずです。また、今あるWebサイトにゲーミフィケーションのフレームワークをかざすことで改善点が見えることもあるのではないでしょうか。

ゲーミフィケーションの”新しさ”とは

 最後に、現場ではない外にいる者としての発言になりますが、ゲーミフィケーションはユーザー(プレイヤー)の「学習曲線」や「感情の起伏」など動機に基づくインターフェイスデザインともいえ、ある意味「行動デザイン」ともいえます。「アーキテクチャ」という言葉よりも一歩踏み込んだ”新しさ”を感じています。

 ぜひ、理論と実践を繰り返しながら、日本でも洗練されたゲーミフィケーションのWebサイトが誕生すればよいなと夢見ています。微力ながら、引き続きお手伝いをしてまいります。

SwapSkills doubbble03
成功するWebサイト戦略手法
ゲームニクス&ゲーミフィケーション

日時
2012年3月17日(土)13:15 〜 17:00(13:00受付開始)
主催
allWebクリエイター塾
会場
きゅりあん
スピーカー
サイトウ アキヒロ氏(立命館大学 映像学部 教授)
井上明人氏(国際大学GLOCOM助教)
久保田 大海氏(NHK出版)
櫻井優樹氏(Metamosphere Inc.)
参加費
6800円(税込)
詳細/申込み
http://swapskills.info/doubbble/03.html

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