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『ビッグデータ革命』の著者に聞く 第1回

分析する意味とは? リアル店舗でもネットの解析が必要になる理由は?

なぜビッグデータが注目されるのか、素朴な疑問に答える

2012年03月10日 09時00分更新

文● 柿木彰/野村総合研究所 ビジネスインテリジェンス事業部長
聞き手●桶谷仁志

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3月12日発売の『ビッグデータ革命』(アスキー・メディアワークス刊)は、携帯向けナビサービスの「全力案内!」、テキストマイニングツールの「TRUE TELLER」(トゥルーテラー)を中心に、ビッグデータビジネスの現状を徹底紹介している。出版を前にして、著者である野村総合研究所の3人に、本書出版の狙いなどについてうかがった。

ネット上から集めた、通れる道路や被災地の声

 昨年3月11日に発生した東日本大震災の直後の3月15日、野村総合研究所では、社長直轄で「震災復興支援プロジェクト」が立ち上がりました。そのプロジェクトの一環として、広く注目を集めたのがユビークリンク事業部の提供した「通れた道路」と、ビジネスインテリジェンス事業部が提供した「被災地の声 分析レポート」です。

 この2つのサービスは、今回の私たちの著書『ビッグデータ革命』の第2章、第3章で詳しく紹介しましたが、両サービスともに、「高精細、高頻度で生成され、多様性に富む」ビッグデータを活用して、社会に貢献するビッグデータ活用の典型だと言えます。

 「通れた道路」は、携帯向けナビサービス「全力案内!」のシステムを応用して、被災地で通行可能な道路をウェブ上で刻々と表示しました。

 また、「被災地の声 分析レポート」は、被災地のソーシャルメディア(ツイッターなど)でやり取りされている現在進行形の声を、当社で独自に開発したテキストマイニングツール「トゥルーテラー」で分析し、その結果を、各地の支援物資のニーズなどがよくわかるように、ウェブ上で公開しました。

 その結果、両サービスともに非常に便利だという反響を各方面からいただき、微力ながら、被災地のお役に立つことができたと思います。また、その結果として、ビッグデータの有効性を実証することもできました。

震災がソーシャルメディアに意味を与えた

 東日本大震災から約1年が経過し、振り返ってみると、2011年はソーシャルメディアが社会的に広く認知され、その活用へのニーズがどんどん高まっていった年だったと位置付けることができます。

 従来、私たちが自主事業として約10年間にわたって開発してきたトゥルーテラーというツールは、企業のコールセンターの声の分析やアンケート調査の分析などに使われてきましたが、使っているのはデータ分析に熱心な、先進的な企業が主でした。

 ところが、最近ではソーシャルメディアに書き込まれるテキストデータを分析することの重要性、有用性に注目する企業が増え、トゥルーテラー活用の裾野も、明らかに広がってきています。

埋もれていた顧客の声が、分析と活用の対象になる

 ビッグデータに関して言えば、2011年は、ビッグデータを処理、分析するためのプラットフォームビジネスが出揃った1年だったと言っていいでしょう。

 このプラットフォームを使った成功事例も、米国ではすでに数多く出てきていますし、日本でも紹介され、その重要性が叫ばれ始めています。ただ、私たちがこの1年間で、あらためて実感していることは、ビッグデータは「不連続ではない」ということです。

 「ビッグデータ」と「ビッグデータビジネス」は、私たちがこれまで手がけてきたビジネスインテリジェンス事業の延長線上にあるからです。

 例えば、コールセンターには、もともと膨大な顧客の声が蓄積されていましたが、分析されていたのは、そのごく一部にしか過ぎませんでした。ビッグデータを即時に、経済的に分析する技術が開発されたことで、こうした今まで埋もれていた声も、分析と活用の対象になってきたのです。

 さらに東日本大震災を機に、ソーシャルメディアの中の声を分析することの有用性、必要性が再認識され、ビッグデータを本格活用しようという企業が急増しました。『ビッグデータ革命』を読んでいただければ、こうした私たちの日ごろからの実感や認識を、具体的な事例を参照しながら、追体験していただけると思います。

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