三代目「Ticket to Ride」も3D性能はパッとせず
とはいえNumber Nineも、さすがに「このままではまずい」と判断していたようだ。Imagine 128-IIは発売後も改修が続き、最終ロットではついにImagine 128-IIのVGA機能(正確に言えばVGA BIOS)の開発が終わったこともあって、GD5424を省いた製品が登場した。そして1997年6月には、「Imagine-3」こと「Ticket to Ride」(T2R)を搭載したグラフィックスカード「Revolution 3D」を発表する。
Revolution 3DはImagine 128系の高速な2D性能をそのままに、3Dの機能を追加したモデル……というのが正確だろうか。Imagine 128-IIからの相違点としては、以下の4点が挙げられる。
- AGP 1x/2xへの対応
- WRAMへの対応
- 大幅な3D性能の拡充※1
- MPEG-1/2への対応
※1 3D FP Setup、バイリニアフィルタリング、アルファブレンディング、フォグ、スペキュラー・ライティング、16/24/32bit Zバッファなどが追加。
WRAMは先にMatroxのMilleniumが採用していたが、本来WRAMを製造していたサムスンは、カタログに60ns品までしかラインナップしていなかった。それにも関わらずNumber Nineは、これらから50nmで動く選別品を使って高速動作させるという、アグレッシブな製品を作っていた。ただし、ここまでやっても3D性能そのものは、S3の「Virge VX」と同等程度レベルでしかなく、ほぼ同時期に出たNVIDIAの「RIVA 128」には、遠く及ばなかった。
結果として、価格をImagine 128 Series IIの半分近くまで下げたにもかかわらず、T2Rは相変らず2D性能を重視する一部の業務用途向けに売れたに過ぎなかった。もっともT2RはWindows向け以外に、Power MacintoshやNEXTSTEP向けも睨んだ製品で、事実Power Macintosh向けには好評だった。
トップエンド市場狙いに切り替えたものの
ドライバーの不出来に沈没
ということで、ようやく今回の本題である「T2R4」の話に入ろう。T2Rの時点で、「RIVA128を初めとするDirect3D 対応グラフィックチップに勝てない」ということを、Number Nineの経営陣も理解したようだ。この頃から同社CEOのAndrew Najda氏は、「Number Nineはメインストリームではなく、トップエンドの何パーセントかの市場を狙う」とはっきり公言するようになった。トップエンドというのはようするに、映像やCAD、医療機器といった市場である。
こうした市場に向けたT2R4は、内部にOpenGLコマンドを高速に処理するための「リストプロセッサー」を搭載し、OpenGLに関して言えばトップエンドの性能を発揮する“はず”だった。スペック的にも全画面アンチエイリアスや10レベルのミップマップ、トライリニアフィルタリング、IEEE754準拠のFPパイプラインなどを装備。メモリーはWRAMないしSDRAM。搭載して出荷された製品はないようだが、WRAM構成でオプションモジュールを追加すると、最大256bit幅のメモリー構成になる予定だった。
このT2R4を搭載した「Revolution IV」や「Revolution IV-FP」は、PCのみならずPower MacintoshやSGIのワークステーション向けにも提供され、一部のモデルには「OpenLDI」と呼ばれる液晶ディスプレー用インターフェースも搭載された。
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