ネットの可能性を生かすには、自分たちが作るものも変えなければ
―― ところで著作権に縛られない、音源を出さないという前提に立つと、世間ではマネタイズが云々という話になるわけですが。音源をフリーにしてライブで稼ごうという話じゃないですよね?
小島 そうではないですね。
―― そもそもCDを出してパツキンのねーちゃんはべらせてガイシャで豪遊……なんて考えてもいないですよね?
小泉 ははは。まったく思ってないです。歌も入ってないくらいですから。
―― じゃあCDを出すことになったのはなぜですか?
小泉 僕らがバンドを始めたころは、インストというだけで(ライブの)ブッキングを断られるくらいの時代だったんです。でも、友達のイベントに出たら、佐々木敦さんがDJで出ていて、その時に声をかけられて、すごいタイミング良かったんですけど、その前日にデモMDが完成していたので、それをお渡しして。今度レーベルを始めるからやりましょうみたいな感じで。
小島 まあ運は良かったですね。
小泉 俺ら運だけはいいからね。ここは正直にお話ししたほうが良いと思うんですけど、僕らが著作権を放棄するのはローリスクなんです、数字的に。マネタイズを気にしなくていいことが、逆に可能性なんじゃないかなと思っているんですよね。なにか音楽ってマネタイズの話をしすぎじゃないですか?
―― いや、ホントそうなんですよね。
小泉 新しいメディアが出てきたら、その5秒後くらいにマネタイズの話になって、何なんだろうと思うんですよ。もう10年くらいマネタイズの話をしているし、でも全然進歩していないし。もちろんそれは重要ですけど、もっとできることを話したほうがいいと思うんですよ。
―― 僕らもこの連載を4年くらいやってきているんですが、もういい加減に飽きてきてるんですよ、カネの話ばっかりで。
小島 はははは!
小泉 そこで努力されている方がいらっしゃるので、あまり軽々しいことは言えないんですけど、ネットで音楽というと、どうしても囲い込んだり制限する方向に行きますよね。それってネットの可能性を生かしてない。ネットの可能性を生かしながらやることを考えたら、自分たちが作るものも変えなければいけないし、自分たちが何をいいと思っているのかも考え直さないとダメだなと思うんです。
―― このサンガツの「Catch and Throw」も、サンガツらしさが感じられるものになってほしいなと思います。
小泉 ほんとにこれからですけどね。
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。
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