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消えゆく日本文化、若者につなげ ニコニコ動画に“再生”の灯

2012年02月18日 12時00分更新

文● 広田稔(@kawauso3

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 今年で5周年を迎えた投稿動画サービス・ニコニコ動画。日常のクスッと笑ってしまう場面から、自作の歌や曲、ダンスや演奏など、数えきれないほどのジャンルの作品が投稿され、10~20代の支持を受けて成長してきた。

 そんなニコ動で今、面白い現象が起こっている。若者文化とは縁遠そうな伝統芸能系動画が驚くほど支持されているのだ。中でも最も有名なのは、昨年8月に投稿された「【邦楽BadApple!!】傷林果」(しょうりんか)だ。



 三味線の杵家七三(きねいえ なみ)さんをはじめ、箏、尺八、太鼓という和楽器で構成された「杵家七三社中」が、ニコニコ動画で非常に人気の高い同人ゲーム「東方Project」(以下“東方”)のBGMをアレンジした「Bad Apple!! feat. nomico」を演奏している。なぜ伝統芸能のプロが同人ゲームのBGMなのか。そしてなぜ音もPVもこんなに“本気”なのか。

 その「先生、なにやってんすか」というインパクトが大ウケして、現在、再生数は85万回を超える大ヒットを記録している。

きっかけは日本独自の奇術を「やってみた」

 作品が生まれるきっかけを作ったのは、手妻師・藤山晃太郎(ふじやま こうたろう)さん。手妻とは日本独自の奇術で、藤山さんはその若き継承者だ。2010年から3年連続で日本奇術協会の「ベストマジシャン」1位に選ばれる快挙もなしとげた。そんな人物がニコ動に「やってみた」動画を投稿し、熱狂的なファンを集めている。

 歌やダンスなどの動画に囲まれ、藤山さんは「シルホイールという大きな輪でくるくる回る」という前代未聞の新ジャンルに挑戦。ニコニコ動画で人気だった曲「ダブルラリアット」をBGMに動画を投稿、瞬く間にニコ動にその名が知れ渡った。




 さらに彼はニコ動で大ブームとなったゲーム「エルシャダイ」のパロディ動画「エルシャダイ 演ってみた」をアップロードし、若者の人気を集めた。いい大人、それもプロがバカなことを本気でやってるというテイストがいかにも“ニコ動的”と絶賛された。

 そんな藤山さんが七三さんに声をかけ、「伝統邦楽シリーズ」の製作を開始。昨年10月には、ニコニコ生放送での舞台配信も試みた。500円という有料配信にも関わらず、ネットでの来場者数が4500人を超えるという大快挙を成し遂げた。

 落語や歌舞伎、狂言といったジャンルでも、過去と今を結びつける挑戦は行ななわれているが、ここまでネットに特化した例は聞いたことがない。一体、なぜ藤山さんや七三先生はニコ動に執着しているのか。ネットではやっているネタに安易にすり寄って、一時的に人気取りしようとしてるのではないか?

 次回作「千本桜」演奏動画を製作中の二人に話をうかがうと、伝統文化の生き残りと継承をかけたプロの覚悟が見えてきた。

4作目となる「千本桜」演奏動画は、群馬県の山奥にある古民家で撮影。演奏は杵家七三社中、歌にはニコニコ内のボーカル「杏ノ助」さんを起用。撮影は映像制作会社とプロづくしの本気で挑む

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