今は人気のFacebookだが
将来的には……
まず第1の「Facebookが広く利用者ないし利用者予備群の間で知られていること」については、現在国産サービス・国産サイトが充実している中国では、人々がTwitterやFacebookを名前こそ聞いたことはあれ、利用したいと思ってはいない。
Googleですら中国におけるシェアは18.3%と百度の77.7%と比較し大きな差があり(調査会社iResearch調べ)、Googleの支持者はインターネット利用歴が10年程度のヘビーユーザーが多く、一方の百度の支持者はインターネット利用歴が短い。
中国の先例を見るに、ベトナムにおいてもいまでこそFacebookの支持者は多いが、人気となる国産サイトが充実していけば国産サイトの知名度があがり、Facebookの利用者は少数派になっていくのではなかろうか。
次に第2の「検閲をはじめたばかりで利用のための“壁”を越えることが簡単であること」についてだが、技術的には中国ほどレベルの高い検閲ではないため、中国の検閲越えで定番の「VPN」のほか、以前は中国でも利用でき現在はほとんどできないと言われているパブリックなDNSやプロキシ経由のアクセスでもFacebookを利用できる。
またベトナム語でGoogleから「Cach vao Facebook(Facebook利用方法)」で検索すると数多くのサイトが表示され、普通にアクセスできることから、調べようと思えば調べられる環境にある。
日本語で「ベトナム Facebook」と検索するだけでも多数のレポートが見つかるが、現在流行のパブリックDNSサービスの利用だけに依存することなく、VPNやプロキシサーバー経由など、複数の回避策を念頭に置き、いざというときにスマートに対応しよう。
さらには、知人にDNSサーバーの設定などを手伝ってもらったり、店舗でPCやスマートフォンを購入する際に店舗スタッフに設定を頼む例もある。
ニーズがあるゆえに、ネットユーザーの間のネットないしリアルでの検閲回避方法が簡単にわかる。最近では3G搭載の携帯電話からFacebookにアクセスする人も増えてきているそうだ。
振り返れば中国でも、ネット黎明期は現在のベトナムのようにプロキシサーバー経由でもどうにでもアクセスできたし、ネット利用者が少なかったので多くの利用者がGoogleに依存していた。
ベトナムのインターネット利用者数は3130万人(ブロードバンド加入数は410万)で、人口に対する普及率は36.6%とすでに中国並みではあるものの、元気なPCショップに3Gスマートフォンの台頭など、まだまだマーケットを見ると伸びしろはあり、やがて回避方法を知る人が少数派になる可能性も否定できない。
対ネット世論に対する検閲をベトナムがどう考えているかは見えない。今は簡単にNGサイトへアクセスできる方法が存在しているとしても、やがて確固たる検閲体制が整うかもしれず、侮ってはならない。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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