このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 6 次へ

まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第32回

サンライズ尾崎雅之氏インタビュー(中編)

TIGER & BUNNYの育て方を尾崎Pに聞く

2012年07月17日 09時00分更新

文● まつもとあつし

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

イベント、そして海外へ。拡がる二次利用

尾崎 「この半年間を振り返ると、まずゴールデンウィーク明けまでの約3ヵ月間、ナムコが運営するテーマパーク『ナムコ・ナンジャタウン』で『TIGER & BUNNY in ナムコ・ナンジャタウン』というイベントが開催されました。これがナムコ・ナンジャタウン史上、ダントツの過去最高売上を記録しています」

―― そうなんですか。ほおお。

尾崎 「もう、ナムコの偉い方が、ビックリして大喜び(笑)。僕自身、銀魂などにも関わって(イベントでも)相当いい数字を残してきたつもりなんですけど、それをも上回っています。

 また、前からやりたかった“作品をテーマにした飲食イベント・飲食展開”もここで実現しました。『TIGER & BUNNY』に関連したメニューを20種類以上提供できたんです。タイバニ愛を持ったスタッフが開発して、それがやっぱりファンに刺さったんですね

―― ネット上でもチャーハン画像は凄かったですからね。

24話のバーナビーのセリフ「いつか、虎徹さんに僕のチャーハン食べてもらおうと思って練習してるんですからね」を受けて、世界中のファンがチャーハンを作り写真をアップ。脚本の西田征史氏は感激して涙したという

この熱狂を受けて、尾崎氏もTwitter上で「タイバニカフェを近いうちに実現したい」と応える一幕もあった

尾崎 「バンダイは規模が大きい会社だけあって腰が重いところはあるけれど、腰を上げたときの前進力は凄い。プラモデル化にしても、ガンダム以外の商品をラインに載せるにあたっては相当な判断があったはずです。高価な金型を作り、ラインを割いてくださったわけですから。

 振り返ってみると、結果論ではありますが、ファンの皆さんのおサイフにも限りがあるわけですから、一気に商品展開するよりも、いい感じにバランスを保って順次商品展開ができたんじゃないかなと思います」

―― 海外についてはどうですか?

尾崎 「バンダイ商品の輸出が大勢を占めています。海外オリジナル商品の申請も数は少ないながら出つつあります。ただ、概して国内メーカー商品のほうがクオリティーも高くて、海外からのニーズもやっぱりそこにありますね。あとはコスチューム系。(虎徹が被る)ハンチング帽の引き合いとかすごいですよ」

―― 海外でも、かなりコスプレ姿を見かけるようになりましたね。

尾崎 「そうそう。『虎徹のハンチングは、どうやったら買えるのか?』『アントニオ・ロペスのベルトは、いつ出るんだ?』『イワンのジャンパーも欲しい』など、僕のTwitterにも、しょっちゅう英語で問い合わせが来るので、海外の商品需要は肌で感じますよ(笑)」

―― 商品化以外の二次利用はどのようになっていますか?

尾崎 「作品の二次利用は様々な権利から生じます。商品化権、出版化権、ビデオグラム化権、自動公衆送信権、上映権、番組販売権等……海外でもそれぞれ同様の権利があります。最近は上映権、上演権――映像上映、イベント、舞台といった興行に関する権利ですね――の利用、いわゆるライブエンタテインメントに注目が集まっています

 ビデオグラム化に関しては、パッケージメーカーであるバンダイビジュアルと共同製作している作品ですからプロジェクトの当初から順次展開しています。配信に関しては無料のUstreamと有料のバンダイチャンネルがあって、今もかなりいい数字を上げています。そこにプラスして、この1、2年旺盛になってきたイベント、舞台が加わります」

―― 尾崎さん自身、それを専門とする会社の役員でもありますね。

尾崎 「ライブエンタテインメント市場が急速に伸びている、これからも伸びるはずと予想して、2010年4月にサンライズとバンダイビジュアルの共同出資で『バンダイナムコライブクリエイティブ』という会社を立ち上げました。

 現在、アニメーションのイベントや舞台化には需要があります。様々な会社・製作委員会がライブエンタテインメントに可能性を見出そうと、企画を立ち上げています。正直ちょっと過熱気味かなという感じもあるんですが……」

バンダイナムコライブクリエティブは、『コードギアス 反逆のルルーシュ』の舞台化からアーティストのコンサートまで広く手がけている

 今回は、作品から派生する二次利用展開を中心に話を聞いた。さて、数ある作品の二次利用のなかでも注目を集めるのが「作品の舞台化」だ。テニミュ(テニスの王子様ミュージカル)が開拓したアニメ・コミックの舞台化市場の現況について尾崎氏はいかに考えているのか。話題沸騰の舞台版タイバニ『TIGER & BUNNY THE LIVE』の秘話も交えて今後の展望を語っていただく。

■関連サイト

著者紹介:まつもとあつし

 ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。ネットコミュニティーやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、コンテンツのプロデュース活動を行なっている。DCM修士。『スマートデバイスが生む商機 見えてきたiPhone/iPad/Android時代のビジネスアプローチ』(インプレスジャパン)、『生き残るメディア 死ぬメディア 出版・映像ビジネスのゆくえ』(アスキー新書)、『スマート読書入門』(技術評論社)、『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)も好評発売中。Twitterアカウントは@a_matsumoto

 最新刊は、従来メディアからインターネットへのメディアシフトがもたらす変化と、デジタル時代のコンテンツビジネスの現状を整理した一冊、『コンテンツビジネス・デジタルシフト―映像の新しい消費形態』(NTT出版)。

■Amazon.co.jpで購入
■Amazon.co.jpで購入

前へ 1 2 3 4 5 6 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ