交通渋滞解消を目的とした、IBMとストックホルム市の取り組み
では、新たな情報システム技術と制御技術、分析技術が求められるビッグデータ時代は、どんなことが起こるのだろうか。
もっともわかりやい例が、スウェーデンのストックホルム市で取り組んだ交通渋滞解消への取り組みだろう。
2006年、ストックホルム市では、市街地の慢性的な交通渋滞を緩和させるために、市街地に入る自動車に対して、通行料金を徴収することにした。
だが、これを実現するために料金所を各所に設置するのではそれにかかる費用も膨大で、運用するための人件費も必要になり、場合によっては、料金所を通過するために新たな渋滞を引き起こす可能性もあった。
そこでストックホルム市では、IBMとの協業で、市街地に入る18ヵ所にセンサーおよびカメラを設置。装置を搭載した自動車が通過すると課金を行う一方、装置を搭載していない自動車には、カメラで撮影したナンバーの画像から文字認識を行い、自動車の所有者を特定。そこから課金を行う仕組みとした。さらに、時間帯や曜日によって課金する料金を変更するという方法も採用した。この結果、効率的な交通量の制御を実現。交通量では25%の削減を達成。CO2排出量でも14%の削減を達成し、公共交通機関の利用を促進することもできたという。
ここでは、自動車からの情報をリアルタイムで吸い上げ、これを3分以内に処理。運転手は口座引き落としによる支払いのほか、通行直後にコンビニエンスストアでも支払いができるという仕組みにした。
そして、この取り組みはこれでは終わらない。
さらに、ストックホルム市では、自動車から吸い上げたリアルタイムデータを利用して、交通渋滞を事前に防ぐという取り組みを開始しようとしている。
ストックホルム市では、現在一日70万台の車両が市内を走行しているという。そのうち、タクシーやバスなどの約20万台の公共車両にセンサーを搭載し、その情報をもとに、道路の混雑状況を把握する一方、気象情報や地域のイベント情報などと連動させ、70万台の自動車が、今後、どういった形に移動するのか、いつ、どこで混雑するのかを予測するという。
ここでは、1秒間に25万件もの自動車のGPSデータの収集が可能となっており、さらにこれらの大量データと、気象情報などの異なるデータとを関連させる形で分析するコンピューティング能力も用意される。そして、そこから予測し、対策を打つといったことができるという。
渋滞が発生しないように、自動車を適切なルートへ導いたり、道路の走行レーン数を一時的に増やしたり、通行を制限したり、公共交通機関への振り替え提案を行うといったことが可能になる。
大量のデータによって、これまでは実現できなかった精度の高い予測が可能になり、それに向けた対策が打てるというわけだ。
日本でも高速道路での渋滞情報をもとに、到着地点までの予測を出しているが、これは実測をもとにした情報でしかない。そのため、予想された時間よりも短時間で到着したり、逆に長くなったりする。
このストックホルム市の例を応用すれば、事故渋滞の場合には、どれぐらいの時間で事故処理が完了し、いまどれぐらいの自動車が走行しているのかといった情報のほか、天候の影響はどうかといった情報などを加え、より精度の高い予測ができるのだ。
このように大量のデータが利用され、そこから分析、予測、対策ができる環境が整うのがビッグデータ時代だといえる。
ピッグデータ時代の到来は、我々の生活をより便利に、豊かにするのは間違いないだろう。
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