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シャープがテレビのスタイルを自由にする!!

フリースタイルAQUOS開発者に聞く、これからのテレビの進化

2011年12月26日 11時00分更新

文● 鳥居一豊 撮影●小林 伸

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ワイヤレスやインターネットの抵抗感をなくしたかった

シャープ AVシステム開発本部の大前良介氏

 次に、もうひとつの特徴であるワイヤレス接続について、今度は主にワイヤレス接続のためのソフトウェア開発を担当した、AVシステム開発本部の大前良介氏に話を聞いた。

大前 「チューナー部とのワイヤレス接続では、PC用の汎用技術であるIEEE 802.11nを採用しました。2.4GHz帯はすでに多くの機器で使われており、特に電子レンジによる干渉もありますので、そういった影響のない5GHz帯を使っています」

 IEEE 802.11nならば100Mbps以上の帯域があり、およそ24Mbps程度となるハイビジョンの非圧縮伝送も余裕だ。伝送距離も見通し30mほどあり、木造家屋ならば一軒丸々を十分にカバーできる。厚いコンクリート越しなど、電波が通りにくい場合でも、一般的な無線LANアクセスポイントを経由しての伝送が可能だ。

フリースタイルAQUOSでは、チューナー部が受信したデータを無線LANでディスプレー部に飛ばしている。木造二階建てならばチューナー部を2Fに置くことで全部屋をカバーできる

大前 「汎用技術を使ったというと、すでにある技術で簡単に実現できると思われがちですが、実際にはさまざまな苦労がありました。私どもが目指したのは、ネットワークを意識せずに使っていただけること。そのために重視したのが待ち時間なしで使えるハイレスポンスです」

 PCベースのワイヤレス技術は、正確な伝送がより重要になるため、リアルタイム性が損なわれることが多い。わかりやすい例が、インターネットの動画配信などで再生が始まるまでのバッファリングのための待ち時間だ。

 しかし、一般的なテレビでこの待ち時間が発生することは許されない。チャンネルを切り替えるたびにバッファリングで待たされているようでは、使い物にならないだろう。

 このため、ワイヤレス伝送のための作業をチューナー側とディスプレー部で分担して並列作業することで、待ち時間の発生を最小にするように仕組みが採用されている。

 実際にテレビのチャンネルを切り替えてみても、チャンネルが切り替わるまでの時間は一般的な薄型テレビとほぼ同様で、ワイヤレス伝送のデメリットなどは感じない。というか、ごく当たり前の感覚で使える。

チューナー部には、地上デジタルおよびBSデジタル用のアンテナ線、LAN接続端子、USB接続端子を用意。USB経由で外付けHDDへの録画も可能

大前 「テレビとして当たり前のことを可能にするのがとても大変でした。例えば、起動時間も当初は1分以上かかったのですが、起動時の処理の並列化や各種の設定を読み込む順番などをコンマ単位で最適化することで、完全に電源が切れた状態からでも約16秒ほどでテレビ視聴ができるように短縮しました」

 起動時間については、より高速で起動できる「クイック起動」という設定もあり、使い勝手を高める工夫も数多い。

 また、著作権保護されたデジタル放送の伝送では、DLNAやDTCP-IP技術を使っているが、現状のDLNAではEPG情報の伝送や録画予約といったテレビ機能の制御まではサポートしていない。番組表閲覧や録画予約といったテレビの基本機能を削るわけにはいかないので、こういった部分については独自に開発して機能を実装しているそうだ。

 このあたりを含めて、薄型テレビを開発してきたシャープならではのノウハウが随所に投入されている。

大前 「テレビ放送だけでなく、インターネットの各種サービスもワイヤレスで使えます。各種のサービスを充実させることも重要ですが、トラブルフリーで使えないとテレビとしては失格です。インターネットの便利さをテレビの機能として提供することが重要だと思っています」

 PCに慣れたユーザーならば、ブラウザーがフリーズしても再起動するなど適宜対処できるだろうが、それを家電ユーザーに求めるのは酷な話だ。たとえインターネットサービスでも、テレビに搭載する以上、トラブルフリーが当然となる。

 ただでさえ、今までにあまり例のない機能は、使いにくそう/難しそうという先入観に繋がりやすい。フリースタイルAQUOSの開発陣は、そうした印象をなくし、ワイヤレス技術やインターネットサービスの便利さだけを提供するという、かなり困難な作業に立ち向かったのだ。

 また、フリースタイルAQUOSのインターネット機能は、同社のネットサービス「AQUOS City」で提供されるが、ここで利用できるサービスもユニークなものが多い。

 動画配信などだけでなく、住んでいる地域で配布されているチラシを閲覧できるサービスやショッピングサイトも女性向けのものを用意するなど、こういった機能に詳しい男性だけでなく、女性にも使いやすいものが多い。

大前「PCやネットの楽しみを白物家電ユーザーにも味わっていただきたいですね」

 そして、独自と言えるのが、「見守りサービス」。これは、テレビの使用状況をメール送信する機能で、遠隔地に住む老齢の両親や親戚などの様子を手軽に確認できるようにするもの。

 例えば、いつもの時間にテレビの電源が入っていることがわかれば、今日も普通に過ごしていると手軽に様子がわかる。こうしたテレビならではのインターネットサービスが充実することで、生活のさまざまな場面がより快適になるはずだ。

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