欲しいと思った時に買える快適さが
電子書籍の魅力を増す
2011年モデルのPRS-G1とPRS-T1の最大の特徴は、通信機能を内蔵したことにより端末だけでも電子書籍を購入できる点にある。初代モデルの頃も、米国では通信機能付きの7型モデルが販売されていただけに、待望の機能がようやく搭載されたわけだ。
PRS-G1は、auの回線を利用する3G通信機能と無線LAN(IEEE 802.11b/g/n)機能を、PRS-T1は無線LANのみを搭載する。今回は試用機の都合で、残念ながら3G通信機能は利用できなかったのだが、無線LANでも利用できるサービスに変わりはない。
無線LAN接続を確立すると、Reader Storeへの接続やウェブブラウザ―機能が使えるようになる。Reader Storeの画面は端末に合わせたレイアウトで表示されるので、狭い画面でも見難くはない。ただし、検索時のテキスト入力や表示画面の切り替えなどは、やはり電子ペーパーゆえの表示の遅さが目に付く。
Reader Storeの機能自体は、パソコンのウェブブラウザ―で買う従来のものと、基本的に変わりはない。小さい画面に最適化されているので、おすすめ書籍の情報が目立ちにくいという印象はある。表示の遅さや画面の小ささを考えると、ジャンルで一覧を眺めながら気になった書籍を買うというスタイルよりも、書名や著者名がはっきりわかっている書籍を、気になった時に端末からすぐに検索して買う、というスタイルに向いているように感じた。
例えば出先での会話の中や、テレビを見ていて出てきた書籍を、書名を覚えておいてパソコンの前に戻ってから買うのと、その場でReader本体からパッと買えるのは大違いだろう。電子書籍を身近なものにしてくれる。またReader本体で買った書籍を、パソコン側にバックアップすることも可能なので、本体の残容量をそれほど気にせず買えるのもいい。ただし、書籍はともかくマンガはやはりデータサイズが大きいので、3G回線よりも無線LAN接続時に買う方がいいだろう。
ウェブブラウザー機能はおまけ程度?
2011年モデルは通信機能を生かして、ウェブブラウザー機能も搭載されている。Readerをタブレット端末的にも使えるわけだが、正直に言ってこの機能はおまけ程度と割り切った方がいいだろう。
やはりネックはディスプレーだ。6型の画面でウェブページを見る際は、スクロールや画面の拡大縮小を多用することになるが、表示切り替えの遅さでどうしても快適ではないのだ。3G機能があるとはいえ、タブレット端末的な「どこでもウェブブラウズ」には向かない。これさえあればスマートフォンいらず、とはいかないだろう。
ウェブブラウザー機能の用途としては、気になった書籍や筆者、関連する情報を検索して、Reader Storeからの購入に活用するといった使い道が考えられるだろう。スマートフォンやガラケーで検索してもいいだろうが、2台並べてごちゃごちゃやるよりも、Reader 1台でこなせる方がスマートだ。その程度の用途ならば、ウェブブラウザー機能でも十分耐えられる。
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Reader 2011年モデルは待望だった通信機能を内蔵したことにより、モノクロ電子ペーパータイプの電子書籍端末としては、ほぼ完成された製品になったと思える。電子ペーパーゆえの読みやすさとバッテリー駆動時間の長さ(無線機能オフ時で最長7週間!)は、液晶ディスプレーのタブレット端末やスマートフォンでは到底真似できない。重さも200gを切る約185gと、ポケットに入れても苦にならない軽さだ。
スクリーンサイズのバリエーションを大小それぞれ方向に広げるという製品展開はありえるだろうし、個人的にも5型モデルで通信機能を搭載したモデルは欲しいと思う(無線LANだけでもいい)。ただ、やはり電子ペーパーを使い続ける以上は、汎用タブレット的な進化には向かないだろう。電子ペーパーはReaderの強みであると同時に弱点でもある。強みを生かす割り切りも必要だろう。Reader Storeが使える汎用タブレット端末が欲しければ、ソニータブレットもある。
電子ペーパーの特性を理解したうえで使うのであれば、書籍を快適に読む端末として非常に優れた製品と言えよう。やはりバッテリーを気にせず使える端末というのは、紙の本と同じ感覚で使える快適さをもたらしてくれるのだ。