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日本の端末メーカーにも喝

「TD-LTEがメイン」と語る、ソフトバンク松本徹三氏インタビュー

2011年12月08日 12時00分更新

文● 末岡洋子

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端末、コンテンツ、ネットワーク
その3つを持つキャリアこそがバリューを生み出す

――ネットワークのトラフィックが増えてキャリアの役割も変わっています。ダムパイプ(土管)になるのかという懸念も出ています。

 ダムパイプという視点で見るのは間違っている。

 われわれは自社をネットワークオペレーターとも思っていないし、テレコム企業とも思っていない。われわれのビジネスは、エンドユーザーにバリュー(価値)を提供することだ。だがこれは付加価値サービスとは違う。われわれが提供するのは付加価値サービスではなく、インターネットだ。

過去にはクアルコムジャパンの社長、ボーダフォン日本法人の副社長、ソフトバンクモバイル副社長などを務めてきた松本徹三氏

 ではどのようなバリューを創造できるのか? 端末、コンテンツとサービス、そしてクラウドに接続するネットワーク、この3つの統合によりバリューがうまれる。端末だけでもダメだし、コンテンツだけでもダメ。ネットワークだけでもダメだ。だれかがこの3つを1つに統合する、これがわれわれのビジネスだ。もちろん、1社だけでやるのではない。そして、バリューに対し、エンドユーザーは対価を払う。

――具体的にどうやって統合するのですか?

 エンドユーザーが興味があることは、端末・サービス・価格、この3つだ。ソフトバンクはこの3つの質問に答えられる。これは、ネットワークのディストリビューションを管理できるわれわれ(キャリア)しかできない。

 現在ソフトバンクのショップに行くと、これらの質問に答えるスタッフがいる。ワンストップマーケティング、ワンストップ課金。これがわれわれの戦略だ。

――では、その価格について教えてください。世界のキャリアの中にはデータ定額制を見直す動きが出ています。

 ユーザーの多くが定額制を利用している。だが1%のユーザーが全体の50%のトラフィックを使っているとすると、これは不公平だ。一部のユーザーが大量のトラフィックを占めるという問題は大きくなっており、なんらかの対策が必要だ。

 世界では、ある一定ラインを超えると超過料金をもらうという方法が検討されており、日本も例外ではなくなるかもしれない。ユーザーがどう反応するか? 一定ラインを設けた場合、それを上回らないように使うようになるかもしれない。課金は非常にデリケートな問題なので、まだ具体的な話は始まっていない。

 大事なことは、ユーザーとの関係を壊すようなことはしないということ。市場とユーザーが受け入れる方法、かつ競争で不利にならない方法で解決していく。

――ここ数年、日本の端末メーカーが苦戦しています。これについてコメントをいただけますか?

 苦戦の理由は、iPhoneのような端末やAndroidのようなOSを発明できなかったからだ。だが、状況はそれほど悪くない。Androidを使えば、どのメーカーでもスマートフォンを作成できる。

 課題はソフトウェア開発にコストをかけすぎていることだろう。これが大きなハンディキャップになっている。開発コストが高くなり、販売できる台数が少ないと、価格は必然的に高くなる。一般的に日本製品は高品質だが価格は問題だ。ソフトウェア開発のコストを下げられれば、チャンスがあるかもしれない。

 端末側のことはわからないが、もし端末メーカーにグローバル市場で勝ちたいという強い意志があればできるはずだと見ている。だが、メーカー側にそのような強い意志と能力があるのか? これは私にはわからない。SamsungでもHTCでもできる。日本のメーカーでもできるのではないか?

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