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日本の端末メーカーにも喝

「TD-LTEがメイン」と語る、ソフトバンク松本徹三氏インタビュー

2011年12月08日 12時00分更新

文● 末岡洋子

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 iPhoneのソフトバンクモバイルによる独占販売が終わり、日本のスマートフォンが新しい段階に入りつつある。iPhone効果もあって純増数でトップを維持してきたソフトバンクモバイルだが、次の一手は何か? 11月12日に、香港でEricssonのイベントに参加中のソフトバンクモバイル取締役特別顧問の松本徹三氏に、LTE戦略を中心に話を聞いた。

主流になるのはデータ通信に適したTD-LTEではないか?
TD-LTE対応スマートフォンも登場する

――9月にAXGP(高度化XGP)の計画を発表しました。TD-LTE(※)との互換性を強調しています。

 AXGPは買収したウィルコムが開発していた技術で、WiMAXベースだったものをTD-LTEベースに変えた。ウィルコムが長い時間をかけて開発していたスマートなセル実装技術が加わっているが、これは標準とは関係ない部分だ。そのため、TD-LTEと100%互換性があり、エコシステムを共有できる。

 TD-LTEでは20MHz幅を利用し、下り最大110Mbpsを目指している。まずは11月にソフトローンチし、2012年3月ごろにはUSBドングルやモバイルルーターをそろえる。メーカーはZTEやHuaweiのものになるだろう。

 TD-LTE対応のスマートフォンは来年の夏には出てくると見込んでいる。さまざまなベンダーと話をしているところだ。

 ソフトバンクはLTEに積極的に取り組む。アグレッシブな実装計画を敷いており、開始後1年で人口カバー率90%を目指す。もちろん、TD-LTE対応のスマートフォンやドングルはすべてデュアルモードで、既存の3GネットワークとTD-LTEの両方に対応するものになる。

※TD-LTE:次世代通信方式「LTE」でもTDD方式(TDD=Time Division Duplex:時分割多重)を採用している通信規格を指す。ドコモの「Xi」などで採用されている、いわゆる一般的なLTEがFDD(Frequency Division Duplex:周波数分割多重)方式を採用し、「上り」「下り」の通信を異なる周波数で行なうのに対し、TD-LTEでは上りと下りで同じ周波数を用いて、時間ごとに上りと下りの通信を分割する。TDD方式ではFDD方式のように周波数の組み合わせが問題とならないほか、下りと上りとで帯域をアンバランスに分割できるというメリットが存在する。

――次世代ではFDD方式のLTEも展開する計画です。

 TD-LTEとLTE FDDの両方を展開する。だがフォーカスするのはTD-LTEだ。理由は将来はTD-LTEがメインストリームになると考えるからだ。

 なぜTD-LTEがメインストリームになるのか? 2つの要素がある。1つ目として、TDの周波数帯は手に入れやすくコストも安いという点が挙げられる。(上りと下りで別に必要な)FDDでは周波数帯の確保が難しく、TD-LTEは多くのキャリアにとって望ましい選択肢となっている。

 2つ目の要素は、LTEは音声もサポートするが、まずはデータ向けの技術であるという点だ。データ通信は通常上りと下りの通信速度が非対称でペアバンド(FDD)の必要はない。テレコム業界は、上りと下りが対称な電話のマインドセットがあり、ペアバンドが常識と思っている人が多い。だがデータの時代はTD-LTEのほうが効率性、柔軟性に優れる技術だ。

 LTE FDDについては、具体的な計画を発表していない。2012年のどこかの段階になると思っているが、まだ時期尚早だ。

キャリアの仕事は周波数帯を最大活用して
市場のニーズを満たすこと

――データの急増への対策は無線LANを利用したオフロードになるのでしょうか?

 トラフィックは今後、40倍、50倍になるといわれており、LTEだけでは対応できない。これはキャリア共通の課題となっている。

 トラフィックの増加にどのように対応するか? 1つはLTEなどのモバイル技術で、2つ目がWi-Fiなどの固定側の技術を利用することだ。40倍、50倍に対応するには、この2つが両輪となる必要があるとわれわれは考える。

 1つ目のモバイル技術では、下り最大42MbpsのDC-HSPAを提供しており、NTTドコモさんのLTEよりも速い速度を実現している。これに加え、2012年に下り最大110MbpsのTD-LTEを、その後LTE FDDをローンチする。既存の3GをLTEにアップグレードするのは比較的容易なので、周波数帯があればLTEにアップグレードしていきたい。

 ユーザーが気にするのは、速度・効率性・価格、この3つだ。キャリアの仕事は、利用できる周波数帯を最大活用して市場のニーズを満たすことだ。

――(現時点ではまだ割り当てがされていない)900MHz帯の投資を開始していると報道されました。

 900MHz帯は、都市部以外での人口カバー率改善にあたって効果的な技術だ。

 ネットワークの強化にあたって必要なのは、周波数帯、技術、そして資金で、この3つのタイミングがそろうことが重要だ。資金があったとしても、商機を逃した投資ではだめだ。適切な時期に適切な周波数帯に、適切な投資をすること、これは簡単なことではないが経営側の責任といえる。効果的な投資ができないと、結果としてネットワークのコスト高になる。

――もし900MHz帯の割り当てを受けなかったら?

 非常に悲しいことだ(笑)。政府がわれわれに割り当てるべきという理由が、さまざまな角度から見てある。それでも1%、0.1%の(割り当てられない)可能性がある。それが現実となったら、残念に思うだろう。

――では割り当てを受ける自信があるということでしょうか?

 もちろんだ。

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