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あなたの知らない最新AVの世界 第5回

屋外で高音質に音楽を聴けるヘッドフォンはどれですか!?

2011年11月30日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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最近話題のBA型の威力を試してみた!

ソニーのBA型ヘッドフォンの構造図

ソニーのBA型ヘッドフォンの構造図。赤いのがBAドライバーユニット

 続いて、カナル型の中でも人気の高いBA型のヘッドフォンを試してみよう。BA型はもともと小型化しやすいメリットを活かし、補聴器などで使われていたものである。

 能率が高く、情報量の多い音が聴けるのが魅力だが、反面、周波数帯域が狭いので、複数のユニットを内蔵したモデルも多い。スピーカーで言う2ウェイ、3ウェイ構成のようなものだ。

鳥居:BA型は海外の高級ヘッドフォンメーカーが採用することが多く、ダイナミック型とはひと味違う解像度の高い再現で有名になりました。国内でもオーディオテクニカから登場していますが、最近ではソニーからもBA型が登場して話題になっています。

編集S:BA型は結構価格が高いイメージがありますね。

鳥居:複数ユニットを内蔵することもあることも原因ですが、もともとオーディオ用としては、ライブコンサートで使われるイヤーモニターとして知名度が広がった経緯もあり、基本的にはプロ仕様や高音質モデルを中心とした位置づけにありますね。ただし、ソニーは1万円未満のモデルも用意するなど、ラインナップを広げていますので、一気に人気が高まりそうです。

オーディオテクニカの「ATH-CK90PROMK2」。こちらも11月18日に発売されたばかりだ

 まずは、オーディオテクニカの「ATH-CK90PROMK2」(実売2万円前後)を聴いてみよう。これは、低域用と高域用の2個のBAドライバーを採用したモデルで、ネットワーク回路の改善などによってさらに音質を向上した最新モデルだ。

 その音はBA型らしい、解像度の高い音だが、高域のキツさは抑えられ、かなりスムーズな音質になったと感じる。クラシックを聴くと、ホールの響きなどの余韻もきめ細かく再現されるし、低音もなかなか力強い。

 BA型では情報量が豊富な反面、線の細い音になりやすいが、本機の場合は音の厚みもしっかりと再現される。ボーカル曲はややタイトな印象はあるが、しなやかで明快なサウンドとなっている。

編集S:おお、音の数が一気に増えました! 細かい音の再現が随分違います。

鳥居:音質傾向としても、忠実感のある正確なサウンドになっていて、オーディオテクニカらしいまとめ方になっていますね。

編集S:解像度の高さという点を含めて、付属のヘッドフォンとはまったく違う印象になります。

鳥居:従来モデル(ATH-CK90PRO)に比べると、かなりナチュラルな音質になっています。ボーカルの非力さがなくなり、ぐっと自分の方に近寄ってきたようなダイレクト感がいいですね。

ソニーの「XBA-1SL」(左)と「XBA-2SL」(右)。12月10日発売予定だ

内蔵BAの数が■で表されている

内蔵BAの数が■で表されている

 さらにソニーの2モデルを聴いてみる。モデルは「XBA-1SL」(シングルBA型)と「XBA-2SL」(デュアルBA)で、予想実売価格は前者が5700円前後、後者が1万4000円前後だ。

 このほかに、トリプルBA型の「XBA-3SL」(予想実売価格1万9000円前後)、クワッドBA型の「XBA-4SL」(同2万2000円前後)がある。ユニークなのは、ボディの後ろ側にBAドライバー数を示すマーキングがあり、シングル型とデュアル型の差別化になっている。

 このほかにもスマホ用にマイクを備えたタイプやBluetooth対応のヘッドセット、ノイズキャンセル機能付きがあり、かなり充実したラインナップになっている。

 シングルBA型のXBA-1SLは、多少高域の伸びや低音再現に不足はあるものの、クリアで細かい音まできちんと再現できている。一般的なBA型と、ダイナミック型のほぼ中間にある印象で、初めてBA型を使う場合でも違和感は少ないだろう。絶品なのはボーカルの再現で、ニュアンスが豊かで強弱の付け方など、歌い方の変化までクリアに再現する。

編集S:バリバリに高解像度というわけではないけれど、クリアで聴きやすいですね。これはなかなか気持ち良く聴けます。これが5000円台というのはちょっと気になりますね。

鳥居:BA型は情報量を重視する人には人気があるのですが、一般的なダイナミック型と音質傾向が違うため、神経質な音と感じる人も少なくありません。そのあたりをよくバランスをとっていると思います。

編集S:付属のイヤーピースの種類が多いですね。また、イヤーピースの内部に低反発ウレタンが入ったものが装着感が良かったです。耳の穴にぴったり収まる感じです。

鳥居:これは「ノイズアイソレーションイヤーピース」ですね。外側を柔らかく、内側を固くすることで変形を防ぎ、内部のウレタンが耳の穴に合わせて変形してフィット感を高めている構造です。フィット感を高めて、音漏れを防ぐ効果もあります。

左が「ノイズアイソレーションイヤーピース」。ウレタン入りだ

左が「ノイズアイソレーションイヤーピース」。ウレタン入りだ

デュアルBA型のXBA-2SLはやや高めということで、付属の延長コードもちょっとリッチな造りになっている

デュアルBA型のXBA-2SLはやや高めということで、付属の延長コードもちょっとリッチな造りになっている

 デュアルBA型のXBA-2SLとなると、今度は低音の伸びが増しワイドレンジな再現になる。周波数特性としても一般的なダイナミック型と比べて不足はなく、音のバランスとしてはXBA-2SLの方が良好だ。

 細かい音が鮮明に再現されるだけでなく、他の音と混ざり合わず、ボーカルも浮かび上がるように聴こえる。クラシック演奏では、コントラバスやティンパニといった低音楽器がややタイトになるが、力強さやスケール感もしっかりと出るようになる。

編集S:これはいいですね! 全部の音が鮮明で明瞭に聴こえます。高域のキツさのようなクセっぽさもないし、好みにも合っています。

鳥居:価格も含めて、かなり良いですね。絶対的な表現力では、オーディオテクニカの方が細部の再現などで上回るのですが、どちらかというと真面目に音楽に向き合うピュアオーディオ的な再現になるのに対し、ソニーの方が聴き心地も良く、楽しく音楽を聴けるように感じます。

編集S:上位モデルのトリプルBA型やクワッドBA型も聴いてみたくなりますね。

鳥居:BA型はユニットが多くなるほど周波数特性は余裕が出てくるし、実力の点では期待できそうですね。ただし、ユニットが増えるとネットワーク回路も複雑になるので、設計は難しくなります。どのような音に仕上げてくるかが楽しみです。

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