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科学と財布の限界を超え、初音ミクを“3次元”に

2011年12月06日 12時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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お金のかかる女に泣かされた

―― 実際にシステムを作りはじめたのはいつごろですか?

Aono モノを買いはじめたのが今年の頭くらいです。その間に、スクリーンの素材を選んだり、理論にもとづいたプロジェクター群の配置といった設計を、6月頭くらいまでに詰めていって。ようやくできそうだというところまできたのが7月の中頃でした。

―― 半年がかりのプロジェクトですね。この大量のプロジェクターは?

Aono ヤフオクでプロジェクターを探してたら、1台1万円くらいで落札できることが分かって、これイケちゃうぞと。そこから「1万2000円超えたら入札しない」ってルールを作ったりしながら、半年がかりで揃えました。

ずらずら並ぶ23台のプロジェクター

―― それにしても、パソコンとプロジェクターを合わせたら大した額ですよ。

Aono ちょうど今の会社に入って、最初にボーナスをもらったころくらいだったんです。なまじ就職すると、お金があるじゃないですか。

―― 初ボーナスは初音ミクのために使われたわけですね。システムはそれで作れたとして、場所はどうしました?

Aono いま入っている寮の1Fに食堂があって、そこが空間的な広さがあること、電子レンジがいくつもある関係、強靭なブレーカーがありまして、「ここしかねえええ!」と。

テストに使ったのは社員寮の食堂だったらしい

―― 社員寮に初音ミクが!

Aono 食堂が使われていない土日にゲリラ的に資材を搬入して。日付が変わるくらいからセッティングを始めて、予定では3時間くらいで終わるはずだったんですが……。

―― が?

Aono 実際に映ったのは朝7時でした。

―― 7時間!!

Aono 同僚のみんなも初めは付き合ってくれていたんですが、その時間までつきあってくれる人はさすがにいなくて。初めての喜びは1人で噛みしめましたね。

―― 初めて映像が出たとき、どうでした?

Aono 泣きました。ドヤ顔で「これは表示できるぞ」という自信はあったんですが、本当に映ってくれたときは、涙が出ましたね。

―― 同僚のみなさんも計画のことは知ってたんですか。

Aono これの全貌を知っている人間はぼくしかいなかったんですが、会社の同僚でもギークな自作好きが多くて、手伝ってくれていたりもしました。浜松は田舎なので、そういうところ(自作)でしかモチベーションを発散できないみたいなところもあるんですよ。

―― えーっ。そんなに田舎なものなんですか?

Aono 寮自体も山の中にあって、コンビニが歩いて10分のところにあって、それで終わりみたいな。窓の外を見れば林だし、モノを作るとか、己と向き合うところしかない。クリエイティブ精神をはぐくむには素晴らしい環境なのかもしれないです。

今回システムを見せてもらったのは、浜松市内にある公共施設「浜松市鴨江別館」。警察署の跡地を使っていて、普段は美術展示やパフォーマンスなどで使われているそう

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