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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第80回

開発陣に聞く第1世代Ultrabook dynabook R631の秘密

2011年11月18日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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dynabook初の外せない「内蔵バッテリー」
バッテリー駆動時間のために決断

 本体の裏という意味では、R631は東芝のノートパソコンにしては珍しく……というと失礼だが、つるりとしてきれいな仕上げになっている。放熱・吸気のための穴が少ないためだが、それに加えてバッテリーが完全内蔵式で、取り外しができない点も影響している。アップルの影響もあってか、バッテリーが取り外せないノートパソコンは増えているものの、dynabookとしては初めての試みになる。

スケルトンモデルでパーツの配置を見る。バッテリーは内蔵式で可能な限り容積を追求している

古賀「確かに、弊社のノートパソコンとしては初の試みとなります。バッテリーが取り外せないというのは、一般のお客様では特に問題ないのですが、企業向けではネガティブに受け取られることも多いですね。

 しかし、バッテリー容量を増やしたいということで、外せない構造にせざるをえなかったのです。その上で、バッテリー自体の寿命を延ばす試み※1の導入など、劣化しないという工夫は入れ込んではじめて、「いいよ」と社内からOKが出たのです。
※1 充電容量を80%までに抑える「eco充電モード」の搭載など。

 このモデルの場合、13インチクラスで他社製品より200gくらい軽くできています。これはACアダプターひとつ分くらい、軽くなったことになります。そのためにもバッテリーは内蔵したかった。その点を評価していただければな、と思います」

 最後にもうひとつ、UltrabookらしいR631の特徴を挙げておこう。それは起動の速さと、スリープのまま保持した場合のバッテリー消費の少なさだ。この点についても、東芝側での工夫が必要であったようだ。

金子「『東芝高速スタート』という起動を高速化する機能は、『R731』から導入したもので、2011年春から採用しています。この点も含め、独自BIOSの開発などもR631へ引き継いで利用しています。

 またUltrabook向けには、スリープへ移行した時に電源ステートを『S5』まで落とし、次に起動するまでのバッテリーの容量を稼ぐ機能が用意されています。これらを使うと、従来のハイバネーションよりも速く起動するパソコンになります。

 ただこの点については、インテルは“入り口”を用意してくれたものの、BIOSや電源周りの実装はOEMに任されています。インテルといろいろ協議しつつ、弊社内でも揉みながら実装していく形だったので、いろいろと大変でした」

 Ultrabook第1世代は、どちらかといえばマーケティングキャンペーン的側面の多いプラットフォームである。しかし、「安価だが薄型軽量なパソコン」の市場が求められているのは間違いなく、「機を逃さずにこの市場を掴みたい」と、東芝が考えているのは間違いなさそうだ。価格面も、発売直前に1万円ほど下げたこともあってか、かなり魅力的なレンジへ落ちてきている(店頭実売価格は12~14万円以下)。

 華麗さはないが、東芝らしい実直な作り。それがR631の魅力と言えるだろう。


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筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(共著、徳間書店)。「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)。最新刊は「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)。

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