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ニコ動の“ボカロ廃”が本気を出したポータルサイトが登場

2011年11月19日 12時00分更新

文● 広田稔(@kawauso3

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二次創作を促進させていきたい

── そういえば、今はドワンゴのニコ動に対する力の入れ方が、動画よりも生放送に傾いてますよね。その中で動画の「ボカロ音楽」を出すというのは、結構珍しいことなのでは? 今まで動画好きの人は寂しい思いをしてたと思うので。


あべ 僕もそう思います。ニコ動の本分って動画だよなあって。本当にもうバランスの問題だと思ってます。

坂本 ちょっと耳が痛いですね。もちろん生放送も動画を盛り上げるためにもやる側面があるんですけどね。動画でやるなら、ユーザーさんの力を借りて、盛り上げたり引っ掻き回したりするような仕組みを入れていきたいですよね。

テレビの番組表のようなインターフェースが特徴的なニコニコ生放送。中高生にとってはもはや“第2のテレビ”になりつつあるのだろうか

あべ 動画の各カテゴリーは、技術が革新されるたびに盛り上がってきた歴史があります。ボカロも最初は静画PVがほとんどだったけど、そこに動画PVが付いて「うおーすげー」となって、ボカロに興味なかった層が一気に押しよせて盛り上がる。でも、進化ってある一定のところまでくると、そのうちに飽和して、わりと停滞気味になってしまうものなんですよね。動画が爆発的に面白くなるには、そういう進化がもう一度促進されるか、一回全部ぶっ壊されて再構築されるか、どっちかなのかと思っていて。

 進化が見られなくなると、そこにいる「村の人」達だけで文化が形成されていってしまうようになる。とはいえ、ボカロでは誰かが意図的に進化を促進させるのも違うのかなと悩んでます。ユーザー側から自発的に突拍子もない進化が生まれるのを期待しているんですけどね。ひとつ僕が注目しているのは、MMD。


── 今、MMDはスゴいことになってますね。MMDのソフト自体も、エフェクトの「MME」(MikuMikuEffect)や「Kinect」でモーションキャプチャーできるなど、テクノロジーとアートの混じり合い具合がものすごい。

あべ ユーザー主催のコンテスト「MMD杯」は驚きますね。あと「MMD-DMC」、DANCE MOTION CLIMAXっていうダンスの動きに特化したイベントもあります。人の踊りをトレースかキャプチャーして、いかにスムーズにかつ面白く踊らせるかを競っている。クオリティーがすごい上がってきているので、新しいものが生まれるだろうと見ています。

 もっといえば全然関係ないところと文化がくっついてほしい。前回のMMD杯でダウンタウンのごっつええ感じの「ゴレンジャイ」をトレースした作品があって、めちゃくちゃ面白かったんですよね。そういう融合の仕方はスゴい。


── ボーカロイドは人の声のデジタル化に使えますが、同様にMMDは有名なダンサーの踊りを保存する用途にも使える可能性がありますよね。

坂本 ボーカロイドに対する歌い手と、MMDに対する踊り手みたいな感じですよね。


── そうした別ジャンルの人が、仲違いしないようにコラボしていければいいんですけどね……。


あべ クリエイター側はそんなに摩擦はないんじゃないですか? たとえば、ボカロPと歌い手は基本的に仲違いしてなくて、ファン同士が言い合っている部分が大きかったり。それぞれのクリエイター側に失礼な人はいるかもしれないですが、それがシーンそのもののように拡散されていくのは短絡的だなぁと思いますね。

 ただ、新しいボカロPと既存のうまい動画師さんや、踊り手さんとMMD師とかでは連携がない状況はある。昔って静画の状態で上がったものに、勝手に動画がくっついてきたじゃないですか。でも、あるときから再生数が伸びるし、クオリティーも担保されるから動画にオリジナルPVを付けるのが当たり前になってしまった。一次作品になってしまったんです。

 ボカロPが圧倒的に多くて、動画師さんが少ないという現状では、いっつもツーカーでつながっている人達が最初からコラボしてしまって、新しく入ってきたボカロPは動画師にお願いしたくても声がかけにくかったり、断られてしまう。で、結局すごくいい曲だけど静止画一枚だけの動画になって、市場の流れに乗っかってこないみたいな。昔みたいに「n次創作」っていう形で勝手なコラボが生まれにくくなっている。そういう閉塞感はありますよね。


── 二次創作って、最近ニコ動ではあまり聞かなくなりましたね。成熟したがゆえの悩みかもしれない。

あべ 二次創作自体は生まれてますが、取り立ててそこを重要視するほど革新的なものじゃなくなっただけだと思います。ただ、ボカロに関しては、「初めの状態でクオリティの高い動画と結びついた状態じゃないと上位にいけない」みたいな状態に陥ってしまうなら、もしかしたらきっかけをつくる企画をこっち側で用意する必要があるのかもしれない。それが原因で埋もれている名曲ってすごく多いので……。


── 一次創作でいい作品を出すって、結局、そこでいいコラボ相手を確保できたかどうかにかかってきますよね。

坂本 それって割と現実と同じですよね。「結局はコミュニケーション能力」みたいな世界になってきちゃうのって、ネットをヘビーに使っている人にとっては辛い。いままではそうではなかったわけじゃないですか。

あべ クリエイター欲として、素晴らしい作品として完パケさせて投稿したいというのは、わかるんですけどね。

坂本 わかるし、マーケティングとしてもそうなるでしょうという感じなんだけど……。プラットフォームとしては元の方向に戻すような何かが欲しい。


── そういう仕掛けの一端を「ボカロ音楽」が担っていくと。


あべ ですね。仕掛けを担うというよりは、文化として不具合のある部分を補完できる場所になれればいいですね。今はステップ1っていう段階なので、「ボカロ音楽」のサイトがどう変化していくかに注目してください。



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