ウイルスバスター2012 クラウド
強力なマーケティングで日本市場をリードしているのがトレンドマイクロだ。ウイルスバスター2012 クラウドの新機能は、マルウェア判定されたプログラムがどこのサーバーから到達したか図示する「原因分析レポート」、強化されたルートキット対策、偽セキュリティーソフト対策「FakeAVクリーナー」、ボットネット特有の不審な通信を検出できる「ファイアウォールチューナー」がある。しかし、この4つの新機能・強化機能は、出荷時の標準の保護レベルでは動作しない。
また「SNSプロテクション」も追加された。これはウェブブラウザー上の「Trendツールバー」機能のひとつとして組み込まれる。具体的にはFacebookやmixi、TwitterでのURLリンクの、安全性を評価するというものだ。
パフォーマンス面でのトピックでは、フルスキャン時にかかる時間を前バージョン比で48%高速化したほか、ノートパソコンではバッテリモードに切り替えた際のスキャン方法を変更することで、スキャン中の消費電力を抑えたという。
なお、2009~2011年製品に含まれていたサードパーティーアプリによる「ウェブブラウザー上でのキー入力暗号化機能」は、2012年度製品から削られている。
大きな変化があるのは2013年度版?
2012年度版の各製品は、おおむね小幅な変更に留まっているが、2013年度版は大きめの変化がありそうだ。
まずマカフィーは、新技術「McAfee DeepSAFE Technology」をコンシューマー製品向けに、2012年中にリリースする予定だ(企業向けには「McAfee Deep Defender」を発表済。日本市場への展開は未定)。
McAfee DeepSAFE TechnologyとはインテルCPUが持つ仮想化支援機能「VT-x」を使い、マルウェアが不正なメモリーテーブル参照によるステルス化を行なうことを、検出する機能を持つ。以前聞いたところ「今回の発表は我々の第一歩で、まだまだ続く」とさらなる拡張を匂わせていた。
インテルCPUの持つセキュリティー機能「Trusted Execution Technology」も使ってほしいものだが、そのためには家庭用パソコンにもセキュリティチップ「TPM」機能を搭載する必要がある。McAfee DeepSAFE Technologyも動作対象は、すべてのCPUにVT-Xが含まれているCore iシリーズ以降となっているなど、ハードウェアに対する要求がやや厳しいのが難点か。
シマンテックは新サービス「Norton One」を2012年前半に開始すると発表している。サービス内容についての詳細な説明はまだないが、1人(あるいは家族)が利用する複数デバイスを、1つのライセンスで集中管理できるサービスになるようだ。2012年度版の新機能となるノートンマネージメントがその一役を担っていると思うが、詳細はまだ不明だ。
このNorton Oneは、購入する製品1つで複数の保護対象をカバーしないと魅力に乏しいので、2013年度版は機能だけでなく、ライセンス形態もかなり変化があるのでは……と期待をしている。
ライセンス体系は他社も見直しをしている。2007年度版で「1パッケージで家庭内の3台までOK」と言うライセンス形態を打ち出したトレンドマイクロは、その後2008年で「SOHO利用でも3台」を認め、2009年には「Win/Macで3台まで」と変更している。筆者は「2012年度版ではWin/Mac/Android」と打ち出すのではと予想していたが、実際はバンドル版の提供にとどまっている。またマカフィーも、1人なら何台でもインストール可能な「マカフィー オールアクセス2012」を発売中だ。
一方で、「3台まで」のライセンス提供を最後まで拒んでいたカスペルスキーも、2010年度版で2台、2011年度版は3台になり、今年は「マルチプラットフォーム セキュリティー」の発売によってWin/Mac/Android共用のライセンス体系に改めた。このように、シェアと収益を左右しかねないライセンス体系の戦いは激しさを増している。
次回はこれらの3製品をインストールして、動作をチェックしたい。
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