このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

徳島のアニメイベントから見る地方振興

アニメとライブと街おこしの融合「マチ★アソビ」

2011年10月27日 17時00分更新

文● まつもとあつし

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

アニメ業界関係者も続々登壇

 東京から離れた場所での開催にも関わらず、期間中には多くの業界関係者が徳島に集まる。その機会を捉え、業界関係者の生の声が聞けるイベントが用意されているのも興味深いところだ。

 筆者は、眉山山頂での「3大アニメ雑誌社勢ぞろいトークライブ」と、四国大学交流プラザでの「デジタルクリエイター養成講座」の司会を務めた。前者は、これまで実現しなかった競合誌の編集長・編集者が一同に集まった非常に珍しい機会で、ライブ会場の熱気の中、歯に衣着せぬトークが展開された。

右から、アニメージュ編集部鈴木雅展氏・アニメディア編集長高尾俊太朗氏・ニュータイプ編集長水野寛氏・当日飛び入り参戦となった娘タイプ編集長宮澤秀和氏。ネット時代における紙媒体の役割について知る貴重な機会となった

 また「デジタルクリエイター養成講座」では、テレビCMでもおなじみのカードゲーム「ヴァンガード」の発売元であるブシロードの木谷高明社長、本連載でもアニメビジネスに対して率直な意見を語った(関連記事グッドスマイルカンパニーの安藝貴範社長を迎えて、アニメの収益化、そして海外展開をどう図っていくのかいった議論が交わされた。

時間をオーバーする盛り上がりを見せた木谷氏、安藝氏のパネルディスカッション。かなり専門的だったが、会場からの本質的な質問が多く飛び出す充実した内容となった

 その他にも、エンタテインメント業界関係者トークイベント、「魔法少女まどか☆マギカ」が21部門中12部門を獲得したアニメアワードなど、アニメビジネスにインパクトを与えるイベントが多数用意されている。先ほどの表現規制の話題とも関連するかもしれないが、東京から離れた場所ということもあってか、関係者同士の会話は弾んでいたように筆者には感じられた。

リアルとライブの価値を再確認する場に

 本連載でも繰り返し述べているように、映像そのものの商品としての価値は、デジタル化、ネットワーク化を受けて、音楽など他のコンテンツ領域同様その評価が難しい局面を迎えている。それに対して、コピー不可能な体験、つまりライブであったり、リアルであることが相対的に価値を高めていることを、マチ★アソビを通じて再認識することができた。

新町橋の上まで多くの人があふれたLisaさんのライブ(写真左奥)。眉山山頂で初披露となったFate Zeroの主題歌ライブは、バックステージでの打ち合わせができないくらいファンの声援が大きかった

徳島空港で限定発売となった、地元銘菓「金長饅頭」とのコラボ商品は、用意した3000個を売り切ったという

 ユーフォーテーブル、ニトロプラス、グッドスマイルカンパニー、ブシロードなど、新興アニメ関連企業がその存在感を示しつつ、伝統的なアニメ作品をリスペクトと共に振り返る場にもなっていたことも興味深い点だ。

アニメージュとアニメディアの創刊からこれまでの実際の誌面を展示。アニメファンに呼びかけ、そのコレクションを集めているもので、手にとって読むことができる貴重な場となっている。美馬市観光文化資料館では出崎統氏の追悼展示会も

 平均すると約3カ月おきと、かなり短いタームで開催が続いてきたマチ★アソビだが、Fate Zeroの制作が佳境に入ったこともあって、さすがに次回は半年程度先、ということになりそうだ。

 今後どういう広がりを見せるか、単にアニメイベントという枠組みを超え、地域振興、アニメビジネスの転換の実験場としても注目しておきたいと思う。

BSフジのマチ★アソビ特番に筆者出演

 今回のマチ★アソビ Vol.7に密着取材した特番「徳島から世界へ~コンテンツ産業の未来 マチ★アソビ byジャパコンTV」に筆者のまつもとあつしが出演。コメントの他、セミナー「エンタテインメントの未来」の模様についても放送予定。

著者紹介:まつもとあつし

ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。ネットコミュニティーやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、コンテンツのプロデュース活動を行なっている。DCM修士。『スマートデバイスが生む商機 見えてきたiPhone/iPad/Android時代のビジネスアプローチ』(インプレスジャパン)、『生き残るメディア 死ぬメディア 出版・映像ビジネスのゆくえ』(アスキー新書)も好評発売中。Twitterアヵウントは@a_matsumoto

 最新刊は、スマホやタブレットを用いた次世代の読書作法を解説する『スマート読書入門』。技術評論社より発売中。

■Amazon.co.jpで購入

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

ASCII.jpメール アキバマガジン

クルマ情報byASCII

ピックアップ