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ミクZ4、3年目の本気! SUPER GT激闘記 第44回

自転車もGTもF1も、ガチで取り組むのが右京流

片山右京に聞いた! 2011年のF1とミクGTプロジェクト

2011年11月04日 18時00分更新

文● 末岡大祐/ASCII.jp編集部 ●撮影/小林伸

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片山右京・独占インタビュー!
今年のレース界はどうですか?

 今年、ミクGTプロジェクトにスポーティングディレクターとして加入した片山右京氏。もはや説明不要な元F1ドライバーのトップアスリートだ。参戦当初からミクGTチームを応援しているASCII.jpとしては、今まで接点がなかった憧れの右京さんに話を聞くチャンス! とばかりに、今シーズンのF1とSUPER GTを総括してもらった(F1はまだシーズン終わってないけど)。

 また、発売されたばかりのF1ゲーム「F1 2011」をプレイしてもらい、プロドライバーの視点からコメントをもらったぞ。

2011年のF1――ベッテルの独走、可夢偉の活躍

── F1はまだシーズン途中ですが、現段階(2011年10月24日の取材時点)でF1の2011年シーズンについて振り返ってみていかがですか?

片山右京。1963年生まれ。元F1ドライバー、自転車競技選手、登山家、そしてGSR&Studie with Team UKYOのスポーティングディレクター。自動車レースはF1だけでなく、ル・マン24時間、SUPER GTの前身である全日本GT選手権、ダ・カールラリーなどに参加した。リタイヤを恐れずに果敢に攻めるドライビングスタイルは「カミカゼ・ウキョウ」と呼ばれた

片山右京氏(以下、右京SD) これまでのF1を見ていると、ベッテルが逃げて、2位以下が争うというパターンが非常に多かったですね。(10月16日決勝の)韓国GPなんかまさに今年の象徴じゃないかな。シーズン前半はマシンのアドバンテージがレッドブルにあったので、他のチームが遅れを取った。F1っていうスポーツは気合いとか根性でどうにかなる世界じゃないんです。常にマシンの開発とドライバーの成長がなければいけません。シーズン中盤からはマクラーレンやフェラーリのマシン開発も進み、レッドブルだけが強いわけじゃなくなってきましたからね。

 あとは、ヨーロッパの天候も関係していますね。ブローディフューザー(※1)のホットブロー、コールドブロー(※2)の選択で大きな差が出ていたと感じます。天候と路面温度、そこにピレリタイヤのワーキングレンジ(ベストなグリップの温度域)が微妙に絡み合って、それぞれのクルマの特性を浮き彫りにしていたところに、ドライバーのスタイルも入ってきて、一言では言い表せないシーズンですね。

※1 エンジンから排出されるガスをリヤディフューザーに吹き付けて、乱気流を整えダウンフォースを増加させるエアロデバイス。
※2 ホットブロー→スロットルオフの状態でも一定量の排気ガスが排出されるシステム。コールドブロー→スロットルオープン時に燃料を出さないシステム。基本的に上位チームがホットブロー、それ以外のチームがコールドブローを採用している。


── やはり今年はピレリタイヤの使い方が明暗を分けた感じですか?

右京SD ピレリタイヤは「崖から落ちる」と表現されるほど、突然ガクンとグリップがなくなります。最初はみんなとまどってたけど、シーズンが進むにしたがって、この特性をうまく利用した戦略を立てるようになってきたよね。中でも小林可夢偉選手は早い段階から適応してたと思う。それが前半の活躍にもつながったんじゃないかな。

 あと、ピレリタイヤってゲーム性が高くて、DRS(可変リアウィング)にしてもKERS(運動エネルギー回生システム)にしても、オーバーテイクがあったほうが面白いって業界の人たちには好評だったんですよ。でも、とあるケータイサイトでアンケートを採ったら、なんと8割のファンがダメ出しをしてた(笑)。「オーバーテイクの価値が下がった」とか言われて。それだけファンの目も肥えてきてるってことですよね。いろんな意味で、今はレースのハードルはかなり上がってきてるんです。

── 今まさに名前が出ましたが、今年の可夢偉選手はどうですか?

右京SD 前半は良かったけど後半苦しんでるのは、途中でマシン開発が止まっちゃったからなんだよね。ジェンソン・バトンが選手の中で一番レギュレーションを把握しているのと同様に、可夢偉選手は腕があって、タイヤマネージメント能力もあって、一番“感じる”能力を持っている。精神力も強いしタフですよ。だからシーズン前半に、ザウバーが向いていないと言っていたサーキットでも結果を出せたし。ブレーキングの巧さとかはルイス・ハミルトン選手っぽいよね。さらに、アグレッシブなドライブができるということも見せていたし、オーバーテイクに強いタフなドライバーなんだけど理性的。それらが前半はすべて噛み合っていた。

── 10月の日本GPでの戦い方はいかがでしたか?

右京SD やっぱり、130Rへの飛び込みでしょう! あれは感動しました。あそこを全開で行けるか行けないかで、シケインまででコンマ2秒の差が出てしまうんです。レース中だと、それが大きく影響します。130Rは、例えばシミュレーションではOKと出ても、実際に走ると恐いんですよ。あそこまで精神的に明暗を分けたコーナーは今シーズンほかにないと思います。

 これがね、ほかのレースだったら、可夢偉選手もあそこまで無理はしなかったと思うんですよ。やはり母国ということや、福島県相馬市の子たちを鈴鹿に呼んだりしてて、日本のみんなの前で自分の力強い走りを見せたい、という特殊なテンションだったんじゃないかと。世界王者のセバスチャン・ベッテル選手以外、誰もやらなかったことをやってしまったのは本当にすごいことです。F1リポーターの川井ちゃんが「同じことができるのは片山右京だけだ」なんて言ってくれたけど、とてもとても(笑)。それくらい可夢偉選手の全開アタックは鳥肌が立ったし、涙も出ました。誰よりも大和魂を持ってて熱いヤツです。同じ日本人として誇りに思いますよ。

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