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ミクZ4、3年目の本気! SUPER GT激闘記 第40回

NOBさん、番ちゃん、チーム、そしてファンの想いはただひとつ

SUPER GT最終戦もてぎ予選はミクZ4が3度目のポール!

2011年10月16日 00時00分更新

文● 末岡大祐/ASCII.jp編集部 ●撮影/鉄谷康博、加藤智充、編集部

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度重なる性能調整もなんのその
今のミクZ4は誰にも止められない!

 今年のSUPER GTもついに最終戦となった。決戦の場は栃木県のツインリンクもてぎ。これまでの7戦を勝ち抜き、チャンピオンを争う資格を得たのはなんとミクZ4と#11 JIMゲイナー 458の2台のみ。もてぎ戦を前に、ドライバーズポイントで458には5ポイントのビハインドを喫しているが、この戦いを勝ち抜けば念願のチャンピオンだ!

 とは言うものの、現実はそんなに甘くない。予選日はチーム関係者が懸念していた、雨が降ってしまったのだ。今期は雨のレースが多いが、そのつど苦戦を強いられてきた。それはファンもわかっているだけに、チームもファンのみんなもノックアウト予選をどこまで勝ち抜けるか、458の前に出られるかどうかが心配であった。

 だが、朝の練習走行で谷口選手は2分03秒台を出して、いきなりブッチ切りのトップタイムを記録。谷口選手曰く「ヨコハマさんが開発してくれたタイヤがバッチリ、ハマった」とのこと。続く番場選手も超絶好調で、最終的にGT300クラスで唯一の2分02秒台「2'02.853」を叩き出し、チームやファンに掛かっていた暗雲を振り払ったのだった。練習走行とはいえ、雨の悪条件でエース谷口選手を超えるタイムを刻んだのだから、朝からSBT炸裂である。番場選手の「なみなみならぬ決意でもてぎ戦に臨んだ」という言葉は、まさにその通りなのだろう。気合いの程がファンにもチームにもビンビン伝わってくる。

 その後も雨は降ったり止んだりを繰り返し、依然として不安定な天気。ノックアウト予選Q1(1回目)が始まる頃には再び雨足が強くなってきた。

 Q1を最初にドライブするのは谷口選手。「2'04.716」を出し、トップタイムで番場選手に交代する。乗りに乗っている番場選手もあっさり基準タイムをクリアして再び谷口選手に交代。途中で雨が止んだこともあって「2'03.155」の自己ベストタイムを更新し、1位でQ1を終了した。なお、痛車仲間では#2 エヴァ紫電、#27 イカ娘フェラーリもきっちりQ1をクリアしたが、#5 マッハ先輩は基準タイムをクリアしたものの残念ながらQ1でノックアウトされてしまった。このとき終盤に、#25 ZENTポルシェがコースアウトして赤旗中断になったが、すでにトップタイムを出していたミクZ4は再開後の出走はせず、Q2へ向けてのセットアップを優先した。ライバルである458も同じく出走せずにマシンのチェックをしていた。

 再開後のQ1も荒れていて、#86 JLOC ランボルギーニがスピンして再び赤旗中断。そのままGT30クラスの占有走行は終了してしまったので、この判断は正解だったと言えよう。

 谷口選手もエントリーし、ランキングトップを走っている「シビックインター」(ワンメイクレース)予選を挟んで迎えた、ノックアウト予選Q2(2回目)。なお、谷口選手はシビックインターでポールポジションを獲得した。さすがわれらのNOBさん、1mmも手を抜かないぜ!

 Q2のドライバーは本日絶好調の番場選手。路面はウェットだったが、このQ2でクラス唯一の4秒台「2'04.024」を刻み、再び1位に立った! このときの様子を大橋監督は「Q2では(無線の様子から)番場選手のテンション低かったので心配だったのですが、フタを開けてみたらトップタイムで驚いた」と振り返る。この記録は塗り替えられることなく、Q2もミクZ4の1位で終了した。谷口選手もこの結果に、「番場選手が不調だったらQ2も俺が行こうと思ってたけど、かなり乗れてるようなので任せました」と太鼓判を押した。

 痛車勢はシンジくんこと加藤選手が搭乗したエヴァ紫電と、イカルロことカルロ・ヴァン・ダム選手がドライブしたイカ娘フェラーリの両方が無事生き残り、3台の痛車はそろってQ3に進出することとなった。

 GT500クラスのQ2のあと、すぐにGT300クラスのQ3が始まった。458もしっかりQ3まで生き残っているので、なんとしてでも458の前で予選を終えねばならない。ここでミクZ4を任されるのはエース谷口選手。最初の数周は流して、アタックラップでいきなり「2'04.356」を記録! この数字は最後まで抜かれることなく、なんと性能調整で苦しいミクZ4が、まさかまさかのポールポジションを堂々と獲得したのだった。今期3回目のポールダンスで、ポールからスタートしたレースは100%ポールトゥウィンで優勝しているチームの必勝パターンだ。

 唯一のライバルである458は途中までペースが上がらなかったものの、最後のアタックできっちり「2'05.234」を出し、それまで2位に付けていた#88 JLOC ランボルギーニを下してフロントロー、ミクZ4のすぐ後ろへとやって来たのだった。

もてぎの地で、このドラマチックな展開は最高の演出
舞台は整った あとは音速の歌姫が最高の舞を魅せるだけだ!

 チャンピオン候補マシンが1、2位という最終戦にして最高のシナリオ。お膳立てはできた。これで盛り上がらないはずがあろうか。大橋監督は「GTAの性能調整が上手く働いたってことですね」と語り、「場合によっては番場選手のスタートも視野に入れている」とさっそく決勝の作戦立案に大忙しである。谷口選手も「絶対、458に勝ってやる!」と、もてぎ戦前の若干弱気だった姿はすっかりなりを潜め、番場選手は「正直、もう458とか気にならないし、気にしていない。勝てばチャンピオンなんだから」と、チーム一丸となって決勝での勝利とチャンピオン獲得を狙う様子が非常に頼もしかった。

 今日の予選は練習走行含めてすべてトップタイムという、前々戦の富士を彷彿とさせるパーフェクトゲームだった。決勝に向けて、良い流れができた。「最初は全然自信なかったんだけど、朝の練習走行で(タイヤに)手応えを感じて。こりゃポール行けるんじゃね? と思ってたら番場選手も調子良くて。こうなったらポールを獲るしかねえ! という勢いで攻めたら、本当に獲れてしまって(笑)。最高の順位で決勝に挑めるね!」と、谷口選手も興奮を隠せない様子で絶口調。

 宿命の対決・痛車 vs. イタ車の前哨戦はミクZ4に軍配が上がった。しかし、458はミクちゃんの真後ろに陣取る。250kmのレースで押さえ込むことができるか? それとも、予想だにしない第3の刺客が現われるのか? 明日の決勝は文字通りの最終決戦。日本が誇る電子の歌姫とドイツのBayerische Motoren Werkeの連合軍が、イタリアの赤兎馬・フェラーリと雌雄を決する。最終章はまもなく幕を開ける!

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