AMD最上位CPUとして順当な進化を果たしたAMD FXシリーズ
デスクトップCPUとしては初めて8コアを実現したAMD FXシリーズ。ベンチマークのスコアを見るかぎり、これまでの最上位モデルであるPhenom II X6より概ね2割程度高速で、AMD最上位としてはまずまず及第点といってよいモデルとなっている。
また、コア数が増えているにも関わらず、アイドル時の消費電力は大幅に削減、高負荷時も同等レベルに抑えられており、性能と消費電力のバランスは格段に向上した。
一方で、ライバルのIntel製CPUとの比較ではCore i5-2500Kとほぼ互角の性能。上位モデルであるCore i7-2600Kには一歩及ばないレベルということで、もう少し性能の上積みがほしかったというのは筆者だけでなく、ユーザー全員の正直な感想となるかもしれない。
ただし、プラットフォーム全体として考えれば6ポートのSATA3.0(6Gbps)の対応や、フルレーンでのマルチグラフィックス環境を構築可能なチップセットが用意されているなど、AMD FXシリーズが優れている点は多く、十分競争力のある製品として仕上がっているのではないだろうか。
また、賛否両論は承知の上で言わせてもらうと、価格については水冷クーラーが付属する「FX-8150」は3万4000円前後とやや高価な印象がら、高性能な水冷クーラーの市場価格が1万円前後ということと、限定出荷という点を考えれば、ギリギリ許容範囲内。とはいえ、ハイエンドユーザーの多くが空冷での運用を前提としている以上、一刻も早く“ノーマル版”のFX-8150を2万円台で投入する必要は感じる。
そんな事情も相まって、コストを重視するならややクロックは下がるものの、市場想定価格1万9000円前後のFX-8120は面白い存在となりえる。安価な8コアCPUとして定格運用だけでなく、オーバークロックで更なる高みを目指してみるのもいい。今回のテストを見る限り、AMD FXシリーズのオーバークロック耐性は高く、冷却さえしっかりしてやれば大幅な性能の上積みが期待できそうだ。久々に自作の楽しさを教えてくれそうな石となるのは間違いないだろう。
紆余曲折という簡単な言葉では済まされないほどAMDにとっては“難産”だったAMD FXシリーズ。まずはお祝いもかねて、Phenom II X6から順当にパワーアップを果たしたAMD FXシリーズを使って、8コアの性能を体験してみてはいかがだろうか。
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