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【追悼】「スティーブ・ジョブズ」の軌跡 第12回

「Keynote 1984」―1984年1月24日 Macintoshデビュー

2011年10月06日 22時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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1984年のスーパーボールのCMとして流された初代MacintoshのCM。当時のコンピューター市場を席巻していた米IBM社を支配者、それに立ち向かっていく女性をアップルに重ね合わせている

 初代Macは、1984年1月24日、アップル本社の近くにあるフリントセンターの講堂で開かれたアップルの年次株主総会の場で発表された。Macの発表の前には、主任法律顧問による株主総会としての事務的な発表と手続き、そしてその9カ月前にアップルの新CEOに就任したジョン・スカーリーがアップルの業績を発表した。そしてその後、総会の最初に短時間登場したジョブズが再び壇上に上がり、かなり芝居がかった調子でMacの紹介を始めたのだった。

本稿は、弊社より20011年10月17日刊行の「CEO スティーブ・ジョブズ」(680円)の一部を抜粋したものです。「CEO スティーブ・ジョブズ」は、オンラインショップおよびお近くの書店でお求め下さい。

Macは3番目のマイルストーン

 もちろん聴衆には、この株主総会でアップルが何か画期的な新製品を発表することはあらかじめわかっていた。ほとんど真っ暗に落とされた照明の中、ジョブズはステージ中央の演台ではなく、左端の袖のあたりから語りかける。まだ誰にもジョブズの姿はおろか、新製品も何も見えない。

 ジョブズはまず、米IBM社がゼログラフィーやミニコンといった、その後に大きな影響を与える製品の発明を見逃してきたという話から始める。さらに1977年にアップルがApple IIを発表したとき、IBMはビジネスには適さないという理由でその可能性を見過ごしてしまったという話に続ける。しかしようやく1981年になると、IBM PCを開発してパーソナルコンピューター市場に参入してきた。そして1984年には、IBMは市場制覇を狙ってアップルに攻撃を仕掛けてきている。IBMは本当に世界を征服してしまうのか。ジョージ・オーウェルの書いた「1984」のように? とかなり早口で聴衆に畳み掛け、ここで有名なアップルの初代MacのCM「1984」ビデオが流れる。かなり効果的な演出だ。

 ここでようやくジョブズに照明が当たる。ジョブズは、ここでMacを具体的に紹介するためのスピーチに移る。話の要旨を挙げてみよう。

 これまでのパーソナルコンピューターには、マイルストーンとなるような製品は2つしかなかった。それは1977年のApple IIと、1981年のIBM PCだ。そしてLisaの登場から1年経った今、我々は3番目のマイルストーンとして、「Macintosh」を発表する。かれこれ2年以上もMacにかかわってきた。そしてついに、狂気じみているほどすばらしい(Insanely Great)製品が出来上がった。Macの価格は売れ筋価格帯の2495ドル。全米の1500以上のアップルディーラーで今日から入手できる。

 Macintoshの革新的な部分を簡単に紹介しよう。第1に、Lisaの技術を売れ筋の価格帯の製品に落とし込んだ。マウス、ウィンドウ、アイコン、プルダウンメニュー、ポイント、クリック、カットアンドペースト──を備えていて使いやすい。これらをすべて2495ドルで実現した。MacはLisaと同じ32ビットの68000プロセッサーを使っている。メモリーは全部で192KBだ。そのうち64KBのROMを備えており、OSやグラフィック機能、ユーザーインターフェースはすべてROMに入っている。RAMは128KB。1980年代のディスクとして、1枚に400KBものデータを記録できる3.5インチのフロッピーディスクを装備する。

 この後ジョブズは、同時に発売されるMacの周辺機器を簡単に紹介したあと、Macintoshを個人的に紹介しようと言い出す。そしてすべてはあのバッグに収まっていると言いながら、ステージ中央に歩み寄り、自らバッグの中のMacintoshを取り出すのだ。

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