パワー感はやや後退するが
細部の再現性や質感が大幅に向上するD5 Hj
続いて、同じiBasso Audioの上位モデルであるD5 Hjを聴いてみた。上位モデルではあるが、サイズはわずかに小さくなる。ボディを共通にしてもいいかと思うのだが、それぞれ専用のボディにしているのは、合理的な設計よりも音質を重視した真面目さの表れだろうか。
バッテリーは内蔵電池となるのは同じだが、再生時間は連続約38時間。USB端子を使った充電や電源スイッチを兼ねたボリュームツマミによる操作などはD2+Hj Boaと同様だ。
左右独立のアンプ回路を採用するほか、旭化成エレクトロニクス製のDACはサンプリングコンバーター機能を備えており、デジタル音声を192kHz/24bitにアップサンプリングして再生することも可能。音質のグレードを高めている。
その音を聴いてみると、意外なことに音圧感がD2+Hj Boaよりも下がったように感じた。音が少し大人しくなったような印象になる。
クラシックを聴くと、フォルテッシモでの音圧感やオーケストラのスケールの大きさはやや小ぶりに感じる。しかし、それを補って余りあるのが、細部の再現性やホールの響きをよりきめ細かく再現する解像感の高さ。ひとつひとつの音が丁寧で繊細に再現され、高域のわずかな粗さや歪み感が減ったため、パワフルさが押さえられたように感じたのだろう。
正統派HiFiオーディオの音作りに振った方向性で、力押しでない質感の豊かな再現になった。これはもう、クラシックの曲をじっくりと聴き込みたいという人にはぴったりな音で、ロック、ポップスに向くD2+Hj Boaとは好対象のサウンドだ。
ジャズなどを聴くと、ウッドベースの低音は量感を押さえながら最低域の伸びがさらに低い音域まで到達しており、音の重心がぐっと下がった安定感のある音に聞こえる。トランペットの音色の表情の豊かさや反応の良さ、ボーカルの抑揚の再現など、情報量の豊かさもさらに際立っており、MP3音源を聴いているとは思えないほど上質な再現になる。
このクラスになると、音源もロスレス音源などで記録したくなるし、じっくりと鑑賞したくなる。屋外でのリスニングでは音楽に夢中になりすぎて公道や駅のホームなどで聴くのは危険になると感じるほどだ。
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