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山谷剛史の「アジアIT小話」 第5回

インドでも「スマートフォン」と「山寨機」の人気が上昇中

2011年09月20日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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スマートフォンのメーカーシェアを急拡大させる
インドメーカーと中国メーカー

中産階級に人気のエアコンの効いた携帯電話ショップ

中産階級に人気のエアコンの効いた携帯電話ショップ

電脳街にも携帯電話の店が幾つもある

電脳街にも携帯電話の店がいくつもある

 BlackBerryをはじめとしたスマートフォンの新機種が百万台単位で加速するインド。とはいえ市場シェアベースでいえばスマートフォンにしろ携帯電話にしろ、世界の巨人ノキアのシェアが圧倒的だ。しかし、ノキアの圧倒的なシェアは崩れつつある。

 調査会社のIDCのレポートによれば、2010年4月~6月のインドにおけるベンダー別出荷数シェアは、ノキアが首位でそのシェアは36.3%。こう見ると高い数字だが、昨年は54%であったし、それ以前は7割以上あったことから考えれば大幅にシェアが減少しているのがわかるだろう。

 代わりにシェアが17.5%から33.2%と増えたメーカーがある。それはサムスンでもなければRIMでもない。IDCの同レポートによればインドメーカーと中国メーカーが急激に頭角を表したのだ。

インド地場メーカーと中国メーカーのシェア(折れ線)、および同メーカー数(棒グラフ)の推移

インド地場メーカーと中国メーカーのシェア(折れ線)、および同メーカー数(棒グラフ)の推移

 2008年下半期から急激にインドメーカーが増加したのを考えるに、その正体は同時期に中国で爆発的に増えたノンブランドケータイこと「山寨機」と中身は同じである可能性は高い。

 山寨機は安いだけでなく、カメラ機能や音楽再生機能をはじめとして安い割に機能を一通り揃えていることが特徴である。

 IDCのレポートでは、出荷数の89%にあたる携帯電話が100米ドル以下(さらに50ドル以下に絞っても40.4%)であり、中小都市や農村部で既存のノキアなどのブランドケータイに代わって新興のインドメーカーの携帯電話が売れているという。

携帯電話のバッテリーを売る露天商

携帯電話のバッテリーを売る露天商

 部品が汎用であるため、故障の際(バッテリーの消耗も含む)に修理部品の調達が楽なことに加え、(中国同様に)外が賑やかなインドでは音が割れんばかりに大きい点もウケがいいようだ。

 現状、シェア36.3%の首位ノキアに続くのは、シェア8.2%のサムスン。その次に中国の「G’Five」がシェア7%で、さらにインドのMicromax、Spiceが続く。中国メーカー、インドメーカーの勢いをみるに、来年中国・インドメーカー勢のシェアがサムスンを凌ぐ可能性は十分ありうる。

テレビショッピングで紹介される地場メーカーSpiceの携帯電話

テレビショッピングで紹介される地場メーカーSpiceの携帯電話

 インドにおいてインターネットは前述の通り利用する人を選ぶが、携帯電話は利用する人を選ばない。多くの機械オンチの市民が「機能を使いこなせてない」と自認する一方、通話や音楽やカメラなど一部機能で満足している。

 インドの携帯電話市場は今までノキア、サムスン、モトローラ。ソニー・エリクソンといったブランドケータイしか流通していなかったが、最近になって上はネットを使いこなすべくスマートフォンを導入する層から、下はとりあえずインドの携帯電話を購入する層まで幅が広がった。

地場メーカーの携帯電話の広告は庶民的な食堂や、新聞紙面にも

 インドの山寨機ブームがトイレより大事な携帯電話で真っ先に起きたと考えれば、やがて次にやってくるだろうテレビや白物家電でも、地場インドメーカーの製品が庶民の間で普及していくことが自然なストーリーとなろう。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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