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スマートラックやRFIDベースのアセット管理製品を投入

KVMからデータセンター管理へと脱皮を図るラリタン

2011年09月14日 09時00分更新

文● 渡邊利和

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9月13日、ラリタン・ジャパンは同社の最新データセンターインフラ管理ソリューションに関する説明会を開催し、今後発売予定の新製品の概要などを紹介した。

スマートラックへの取り組み

 ラリタンは、アナログモデルの「Paragon」やデジタルモデル(KVM-over-IP)の「Dominion」といったリモートKVMソリューションでよく知られているが、サーバーを対象としたリモート管理技術であるKVMスイッチを核として、現在はラック全体を多角的に管理するソリューションの拡充に取り組んでいる。

ラリタン・ジャパンのカントリ マネージャーのジェラード・ポールクラーク氏

 まず概要説明を行なったラリタン・ジャパンのカントリ マネージャーのジェラード ポールクラーク氏は、同社が掲げる“スマートラック”コンセプトを、「ラックにさまざまな監視機能を与える」ものだと説明した。以前から、同社の製品ラインナップにはコンセントごとに電力消費情報を取得できるインテリジェントPDU「Dominion PXシリーズ」や、そのオプションで「温度/湿度センサ」などがあり、基本的な監視機能はすでに実装済みだった。さらに多彩な情報収集が可能な新しいセンサーや、センサーからの情報を統合して理解しやい形式で出力する監視ソフトウェアなどを充実させることで“スマートラック”を実現していくことになる。同氏は「計測なくして管理なし」という言葉で、センサー群の充実に取り組む同社の姿勢を明確にした。

 

Raritanのスマートラック

 続いて製品の具体的な紹介を行なった同社のテクニカルセールス&サポート部マネージャーの柏倉 啓一氏は、まず今後発売予定の新製品として管理ソフトウェア「dcTrack」、アセット管理のためのRFIDタグ製品「AMT」「AMS」、管理アプライアンス「EMX」について紹介を行なった。

 

ラリタン・ジャパンのテクニカルセールス&サポート部マネージャーの柏倉 啓一氏

 dcTrackは「スマートラックの中核をなす管理ソフトウェア」であり、各種センサーからの情報を統合してグラフィカルに表示、アセット管理やキャパシティ管理、変更管理などの機能も実装する。既に英語版は発売済みだが、日本語化が2012年半ば頃に予定されており、そのタイミングで国内販売を開始する計画だという。

 

 dcTrackでは、センサーからの温度/湿度情報をもとに、サーバールームのフロアマップ上に温度分布をビジュアル表示することで熱だまりの存在などを分かりやすく示すことができる。また、ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)がサーバールームの環境条件として公表している温度/湿度の条件(空気線図)をビジュアルに表示するほか、ユーザーが独自に許容範囲を明記することもでき、許容範囲から外れたデータの詳細を詳しくチェックする、といった操作もできる。これにより、空調の運転状況を最適化したり、運用する機器の状況に応じて環境条件を独自に緩和することで空調を極力使わないように制御するなど、さまざまな高度な制御が実現できる。

 

 以下を見ればわかるとおり、センサーからの温度/湿度が空気線図上にプロットされていくので、範囲を逸脱したデータがあった場合にのみ対応すればよい。また右上はサーバルーム内の温度分布を視覚化したもので、ホットスポットの存在などを確認できる。

 

dcTrackの画面イメージ。左下は空気線図で、赤枠はASHRAEの推奨環境、青枠はユーザーが独自に定義した許容範囲を示す。

 アセット管理では、物理サーバの監視用にサーバに貼付するRFIDタグ「AMT」(アセットマネジメントタグ)と、AMTを読み取るためのリーダーに相当する「AMS」(アセットマネジメントストリップ)が今年末から来年初頭頃に発売される予定となっている。AMTはサーバーに貼り付けることができる薄いフィルム状のシールだ。このデータをAMSで読み取ることで、ラックのどの段にどのサーバーが格納されているかをリモートで追跡できる。インテリジェントPDUなどを通じてサーバを追跡することも可能なようだが、サーバーに物理的にタグを付けておく、という発想は泥臭いようだが実用性は高いように思われる。

 

AMT/AMSのイメージ。長いテープ状のリーダ(AMS)をラックに設置しておき、サーバに貼り付けられたAMTのデータを読み取る。標準的には、AMSは同社のインテリジェントPDUに接続される

 管理アプライアンスである「EMX」は、同社のインテリジェントPDUを使わずに同社のセンサーやAMT/AMSを利用する場合に情報収集や送信を行なうデバイスだ。すでに他社製PDUをラックに設置している場合などに利用される。

 

仮想化の進展がKVMソリューションを変える

 このほか、KVM製品のアップデートについても紹介され、iPhone/iPadからのリモートアクセスのサポートや、デジタルオーディオ機能の追加などの機能強化についてのデモも行なわれた。

 

 物理サーバのキーボード(K)、ビデオ(V)、マウス(M)を遠隔接続するKVMソリューションは、大規模なデータセンターできめ細かな運用管理を行なうために利用されてきたが、同社がそこから一歩踏み出し、スマートラックというコンセプトを打ち出した背景には、仮想化の進展があるという。

 

 従来のIAサーバー/Windows Server環境では、ローカルのKVMを使いたい場面が多々あったため、運用管理の効率化のためにKVMソリューションが有効だったが、仮想サーバーでは最初からリモートからの管理が前提となっているため、KVMソリューションの必要性が薄れている。このため、新分野のソリューションを開拓する必要があるのは確かだろう。一方で同社製品はこれまで中~大規模のデータセンターの運用管理者から高く評価されてきた実績があるため、いわばKVMからのボトムアップ的なアプローチで管理対象をサーバからラック、マシンルーム全体へと拡大するのは、現場の運用管理者の支持をそのまま引き継げる可能性が高い。

 

 ソフトウェアによるインテリジェントな統合管理環境に関しては、データセンターの高効率化という文脈から現在きわめて重要な取り組みと認識されており、先行する企業も少なからず存在するが、現場の支持を得ている同社には相応のアドバンテージもあると言えそうだ。

 

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