プロコンテンツは“成長”より“安定”に進んでいる
プロコンテンツ系配信サービスの歩みを振り返ってみよう。無許諾アップロードを横目で睨みつつ、独自配信を試み、十分な収益を上げられなかったというのが第1段階だ。
第2段階は2つの方向性に分かれるだろう。1つは「テレビとの補完関係で主に広告で収益を上げよう」というモデル。Yahoo! GyaO、Huluが目指すものだ。もう1つは「特定のカテゴリーに特化し、定額制でファンの囲い込みをする」モデル。バンダイチャンネルや、日本版Huluがそれにあたる。
前者はテレビ局からの出資を積極的に受け入れることで、人気コンテンツの安定供給をねらう。GyaOが一時期、テレビドラマ「鈴木先生」1〜3話を無料で視聴できるようにしていたことは記憶に新しい。
後者はカテゴリを絞ることで、調達コストをおさえ、安定した収益を確保する。バンダイチャンネルも社名には「バンダイ」を冠するが、実際はIMAGICAイメージワークス/ジェネオン・ユニバーサル/角川書店/マーベラスエンターテイメントなど各社が出資しており、出資企業以外からも作品を幅広く調達している(ただし東映アニメーションやトムスエンターテインメントのように、作品カタログが豊富な会社は加わっていない)。
だが、この「第2段階」にあっても、収益性と成長性については不確定な面が多い。
テレビコンテンツ供給型では、赤字ではないものの出資メディア企業が満足する収益までは上がらないというのはHuluが事例を示したとおりだ。メディア企業が中心となって運営してきたHuluに対して、ヤフー傘下に入ったGyaOは言わば売却後の姿の一例を示しているとも言えるが、ヤフージャパンの集客力、ポータルサイトとの連携で成長の絵を示せるかどうかが問われている。
カテゴリーを絞り込んだ場合は、さらに成長性について難がある。アニマックスなど一部を除くケーブルテレビのアニメ専門チャンネルが軒並み苦戦しているように、特定のコンテンツカテゴリのファン層は急速に増えるという性格を持たないからだ。見放題モデルの場合、いわゆる「名作」を軒並み見た後は、退会されてしまうというリスクもある。
いずれにせよ成長型ではなく、安定型(ケーブルテレビでは釣りやゴルフなどの“専門チャンネル”がそれにあたり、地上波放送の見逃し視聴サービスに特化することで安定をはかる)を目指すのであればよいのではないかと言えば、そうとも言えない。そこにはすでに、米国で圧倒的な存在感を示している「Netflix」型のサービスがひかえている。
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