Huluの成功は“無許諾アップロード対策”が1つの理由
プロコンテンツのネット配信を権利元(テレビ局や映画会社など)が考える際、まず念頭に置くのが自前でのサービス展開だ。
アグリゲーター(コンテンツの調達を専門にしている事業者)や、プロバイダーなどのサービス事業者を介さない分、利益は単純に増大する。また、ウィンドウコントロール(作品を公開・非公開とするタイミングや価格設定)もできる上、ユーザー情報もダイレクトに入手・蓄積できるからだ。国内外を問わず、多くのテレビ局・映画会社がまずこの自前サービスを展開したのも、一見合理的とはいえる。
だが権利元である彼らは早晩、事業計画との乖離に苦しめられることになる。作品ラインナップ(カタログ)が各社ごとに分断され、視聴の手続きなどがバラバラな状態では、ユーザーはあえてネットでそれらのコンテンツを見ようとはしなかったのだ。
一方、配信専業の企業にとっては、コンテンツ調達コストが課題となった。サービスが乱立する中、人気コンテンツは絞り込まれ、その調達コストも高い。苦労して確保した有名作品も、ユーザーから見れば“どこにでもあるもの”と映ってしまう。独自色を出す前に、最低限確保しなければならない作品を押さえるのに手一杯になってしまっていたのだ(この状況は現在の国内電子書籍市場の様子とも通じるものがある)。
Huluはそんな厳しい背景の中、2007年に米国で誕生した。NBC、FoX、ABC(ディズニー)などメディアコングロマリットの合弁会社で、元アマゾン上級副社長のジェーソン・カイラー氏をCEOに迎えているのも特徴的だ。2006年までに相次いだ、YouTubeへの番組無許諾アップロードと、それに対する一連の訴訟も、Huluの勢いを後押ししている。
コンテンツホルダーが共同でサービスを展開し、コンテンツを集約する。カタログの充実と一元化を図る。テレビ番組を見逃がしても、(いつ削除されるかわからない無許諾アップロードの動画を探さなくとも)Huluに行けば大抵のものはある。広告付き無料で見られるという安心感も相まって、Huluは支持を拡げた。広告主にとってもテレビ番組と同じ感覚で広告をつけられるわけで、やはり(どんな動画に広告がつくかわからないUGC系のサービスに比べ)安心だったと言える。Huluはこうして2009年には黒字化を果たしたわけだ。
ヤフー“GyaO”は日本版Huluだった
実はこうした動きは日本にもすでにある。それがGyaOだ(関連記事)。作品の調達に当たって、MG(ミニマムギャランティ、最低保証料)を支払うモデルから脱却し、フルレベニューシェア(完全成果報酬制)に移行したGyaOは黒字化を果たしている。そのGyaOに対し、テレビ局(テレビ朝日・TBS・テレビ東京・フジテレビ・日本テレビ)、電通・博報堂など各社が相次いで出資しているのだ。
昨年1月のインタビューで、GyaO川邊社長は、「ニコニコ動画とはライバル関係にない」「目指すは放送と通信の補完であり、テレビが失った視聴機会を取り戻す」ことを強調している。同時にHuluを「当然意識している部分はある」としながらも「広告枠の考え方が異なる(Huluは放送と通信両方の広告枠をセットで販売するが、日本では“放送時間帯”というCM枠が存在しているので、単純化できない)ので、まったく同じものにはならない」と指摘しているところも注意しておきたい。
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