持ち運んで複数の場所で使う、そんなことも……
本機の魅力は、薄さや軽さといった外見的なものが一番ではあるが、そうしたテレビを快適に使うための工夫の数々も見逃せない魅力だと感じる。
たとえば、こうした機能を活用すれば、テレビをキッチンに持ち運び、インターネットで見つけた料理レシピを見ながら、新しいメニューに挑戦することもできるなど、新しいことに挑戦したくなるはず。そんなユーザーの生活スタイルまで変えてしまう力が「フリースタイルAQUOS」にはあると思う。
筆者としては、32V型のモデルをふだんは机の上に置いてパーソナル用ディスプレイとして使いつつ、ベッドで横になってテレビを見るときは手軽に壁掛けにして視聴するような使い方をしてみたいと思った。
面白いと思ったのが、エレコム社製の壁掛け設置金具の仕組み。金具に内蔵されたアームを伸ばせば画面の向きを自由に調整できる。壁掛けのデメリットとしては、画面の向きを座る場所に合わせて調整できない点があるが、この金具ならば、そうしたデメリットを解消できる。
このほか、20V型用に用意されている壁掛けフックは、ディスプレイ部に備わったハンドル部を引っかけるだけのため、地震の被害に少々神経質になりがちな現在の心境からすると落下の心配なども感じていたのだが、実物をよく見ると、しっかりとした強度を確保しているだけでなく、ハンドル部分を引っかけるとカチッとロックされるようになっており、安 心して使用できるものだとわかった。
しかし当然ながら「他社でも容易に真似できる」商品というわけでもない。
取材では、F5シリーズの薄型・軽量化の秘密を紹介する分解モデルを、従来製品との比較で見ることができた。これを見ると、従来モデルに比べてF5シリーズを構成するパーツがかなり少なくなっていることがわかる。
液晶テレビは、基本的に液晶パネルとバックライトの前後に補強のためのシャーシがあり、さらにその前後に表から見えるカバーが備わった構造だ。F5シリーズは、前側のシャーシと前面カバーを一体化するなど、それぞれの構造パーツを一体化することで従来以上の薄型を実現している。
もうひとつのポイントは、ベゼルと呼ばれる画面周囲のフレーム部分が狭いこと。従来の薄型モデルの場合、液晶パネルの周囲には駆動用のドライバー回路があるため、ベゼルを狭くするのは難しい。逆にベゼルを狭くするには、駆動用ドライバー回路を液晶パネルの裏に重ねる必要があるため、薄型化が難しくなる。
つまり、従来よりも薄く、しかもベゼルを狭くするには、駆動用のドライバー回路から新開発する必要があるということだ。これは液晶パネルから生産しているシャープならではの強みが現れた部分。仮に同様の製品を他社が発売したいと思っても、シャープと同様の液晶パネルをパネルメーカーから手に入れるところから始めなければならず、素早く追従することは難しいだろう。