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東京証券取引所のセカンダリサイト構築事例についても紹介

完全二重化は無駄?コスト効率の高いBCPなら「Oracle MAA」

2011年08月24日 10時00分更新

文● 渡邊利和

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8月23日、日本オラクルは同社のBCP関連技術についての記者説明会を開催。併せて、最新の事例として東京証券取引所のセカンダリサイト構築事例についても紹介を行なった。

 

BCPも進化している

 BCP(事業継続計画、Business Continuity Plan)に関しては、3月11日の大震災以降多くの企業にとってきわめて現実的な課題となっているのは間違いない。冒頭で挨拶を行なった同社の常務執行役員 製造・金融・通信営業統括本部長の三露 正樹氏は、「大震災で何らかの被害を受け、そこからの復旧を経験した企業の多くで改めてBCPを見直し、今回得られた教訓/経験を踏まえてBCPをいかに策定し、それを社内のルールとしていかに定着させていくのか、ということに対して関心が高まっている」と語った。

 

オラクル 常務執行役員 製造・金融・通信営業統括本部長の三露 正樹氏

 こうしたニーズに対して同社はITインフラストラクチャーやアプリケーションの部分で寄与していくことになるわけだが、同社が「長い経験を持つデータベース技術、および情報をいかに失わずに継続的に整合性を保っていけるか、という点においては、長期的な技術的な積み上げがある部分であり、これを踏まえて“Oracle Maximum Availability Architecture(MAA)”という体系としてまとめた」と紹介した。

 

Oracle Maximum Availability Architecture(MAA)の概要

完全二重化ではコストがかかりすぎる

 次いで登壇した同社のテクノロジー製品事業統括本部 データベースビジネス推進本部 製品推進部 シニアマネジャーの谷川 信朗氏は、現状で同社が提供できる技術を踏まえた最新かつ現実的なDRソリューションの概要を紹介した。

 

オラクル テクノロジー製品事業統括本部 データベースビジネス推進本部 製品推進部 シニアマネジャーの谷川 信朗氏

 同氏は、企業の大本の目的は「収益向上」であり、事業継続への取り組みや災害復旧対策などはあくまでも「リスク管理」の取り組みであると説明する。そこには当然ながら「コスト抑制」が前提条件として課せられることになるという点を再確認し、情報保護のために鋼信頼だが高コストのソリューションを導入することが難しくなってきているという現状を指摘した。その上で同氏は、「視点を変える」という同社の提案を紹介した。同氏は、「従来の“保険”的な発想ではなく、“有事の対策を平時の運用に取り込む”ことでROIを向上させる」ことが必要だとした。

 

 従来型のDRのアプローチでは、本番環境とまったく同一の環境をバックアップとして用意していたが、この場合は単純に倍のコストが掛かってしまうという問題がある。また、こうしたバックアップサイトは、本番サイトの運用継続が不可能な状況が起こらない限りただ待機するだけで終わることになるので、まったく活用されることなく終わる可能性も高い。

 

 また同氏は、オラクルの基本的な考え方として「専用ハードウェアから機能を解放し、ソフトウェアで機能を実現することでさまざまな環境でより安価に機能を利用できるように」してきたという。BCP分野における実例として同氏が挙げたのが“Oracle Data Guard”“Oracle Active Data Guard”“Oracle GoldenGate”といった製品群で、これらを活用することによってスタンバイサイトがプライマリサイトの完全なコピーでなくても問題なく運用できるようにするなど、さまざまな効果が得られるという。

 

データベースの技術革新で完全二重化は不要へ

 また、Data Guardでは手動によるサイトの切り替えも容易に行なえるので、たとえば同社自身が2カ所のデータセンターを定期的に切り替えながら運用し、両方の資産を活用しつつ、ソフトウェアのアップデートなどの対応もその間に行なうといったメリットを得ているという。従来型の完全二重化の発想ではコストが掛かりすぎるため、DRサイトの構築を諦めてしまう例も珍しくはなかったはずだが、現在では完全二重化に限らず、よりコストを抑えながら適切なレベルの保護を実現するソリューションが存在し、選択の幅が拡がっていることがあまり認知されていないことが問題なようだ。実際、東京証券取引所でセカンダリサイトを構築した事例では、プライマリサイトとまったく同一の環境を用意するのではなく、ある程度のシステム規模の縮退を前提にシステム構成を調整するなどの工夫によって完全二重化を実施した場合の半分程度のコストで実現したという。

 

東京証券取引所でセカンダリサイトを構築事例

 1000年に一度と言われる規模の大災害を経験した以上、災害対策について何も手を打たないという選択肢は企業規模を問わずまず選び得ない状況となっている一方で、だからといってコスト度外視で最上級のソリューションを導入できるわけでもないのは当然だ。この分野でも技術革新によってより低コストで十分な保護が実現できるようになってきている以上、こうした情報を的確に得て現実的な対策を選んでいくことが重要だろう。

 

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