専用メガネを使う3D表示機能はGPUに負うところが多かったが、Qosmio T851のグラスレス3Dは、Cell B.Eをベースにした東芝独自の映像処理プロセッサー「SpursEngine」が担っている。特に、2D→3D変換では複数のアルゴリズムを処理して、2D映像に奥行き感を持たせることに貢献しているという。そのおかげか、非常にリアルな3D映像を体験できた。
Qosmio T851でグラスレス3D表示が可能なのは、2つのアプリケーションだ。ひとつは「TOSHIBA Blu-ray Player」で、BD 3Dソフトの3D表示のほか、DVDやネットからダウンロードしたH.264映像など、既存の2D映像の2D→3D変換表示ができる。もうひとつはテレビの表示・録画を行なう「Qosmio AV Center」で、全画面表示や「ながら見モード」で、2Dのテレビ映像を3D変換して楽しめる。
これらソフトを立ち上げると、液晶ディスプレー上部にあるウェブカメラが起動して、自動的に「フェイストラッキング」ソフトが立ち上がる。ウェブカメラを使って視聴者の両目の位置を判定して、適切な深度と向きの3D映像を作り出すのがQosmio T851のグラスレス3Dの特徴である。3Dの深度は「弱い/標準/強い/デモ」の4段階に調整でき、強い~デモにすると画面から飛び出してくるようにも見えるという(推奨レベルは標準)。
BD 3Dソフトから2Dのテレビ映像、2DのDVDや何種類かの動画ファイルを試してみたが、この立体感を言葉で表現するのが難しい。読者諸兄は立体に見えるシール状のシートをご存知だろうか、表面に細かな凹凸のあるプラスチックシートが貼られたもので、視点を左右にずらすと背景が動いて立体に見えるというものだ。グラスレス3Dの見え方は、その立体シールの目を細かくしたような感じだ。
筆者の場合、画面から飛び出してくるのではなく、奥行き感を強く感じた。例えば海中撮影のBD 3Dソフトを見ると、画面の向こうに奥行き30cmぐらいの水槽があって、そこに魚が泳いでいるという雰囲気だ。効果的なのはやはり3D CGベースの映像だろうか、MMDの動画ファイルを2D→3D変換して視聴すると、臨場感がすごい。しかし2D→3D変換での3D表示は、映像の解像度がかなり低下したように感じた。見え方もかなり個人差があるようで、家人は「立体ではなく二重に見える」と述べていた。
グラスレス3Dは確かに斬新だ。しかし、パーソナル向けのノートパソコンであることと、フェイストラッキングによって3D映像の視聴者を1名に限定していることを考えると、専用メガネを使うフレームシーケンシャル方式で得られる完全な没頭感も捨てがたいように思う。そう考えるとQosmio T851のグラスレス3Dは、パソコンの2D画面を残したままウインドウ内部だけを3D表示にできること、すなわち「ながら3D視聴」向きなのかもしれない。
なお、これも個人差だとは思うが、筆者の場合はグラスレス3D映像を注視していると結構と目が疲れた。視聴者の視力も影響すると思われる。
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