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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第68回

ここがライブの終わりと始まり――「デPフェス」渾身のCD2枚組

2011年08月13日 12時00分更新

文● 四本淑三

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「デPフェス!!」CD2枚組で2000円。安い!!

 ボーカロイドを使ったインターネット時代のトラックメーカー、いわゆる“ボカロP”として初となるライブアルバム「デPフェス!!」が、ついに本日8月13日発売となった。

 2011年4月9日(死球の日)に高円寺HIGHで行なわれた、前代未聞のボカロPソロライブ「デPフェス!」の模様を収めたCD2枚組。鬼才が集まるニコニコ動画でも難曲で知られるデッドボールP(デP)の曲を、すべて“人力”でやりきるという企画そのものはまさに無謀。ゆえにその記録がエンターテイメントであるような、最近としては珍しい正真正銘のライブなアルバムになっている。

 記事が掲載される頃、デPは夏コミの会場でこのアルバムを売っているはずだが、とらのあなアニメイトの通販でも購入できる。ボカロPのライブは東京や大阪など大都市圏が中心で、チケットは基本即完。聴けるチャンスはかなり少ない。こうしてパッケージになる意味は大きい。そしてボカロシーンから生まれたライブという、ボカロ文化に偏在する多様な頂点のひとつとして、ぜひ体験してほしいアルバムでもある。

 このライブアルバムの発売を記念して、デP本人と、デPフェス!当日のPAを担当したエンジニア、武井一雄さんにお話を伺った。武井さんはサカナクションやm-floらのアリーナライブのPAシステム設計を担当してきた敏腕エンジニア、いわば“プロの犯行”だ。詳しくはこちらをどうぞ

デPフェス!!

Disc:1
01. 私は人間じゃないから。
02. 千夜一夜千日手
03. MC:1
04. マンドラゴラ
05. MC:2
06. 椿の花
07. 1LDK
08. Japanese Ninja No.1 (Take2)
09. MC:3
10. いつしか、必ず
11. とある娼婦の恋
12. 脱げばいいってモンじゃない!

Disc:2
01. Wash My Blood
02. 既成事実メドレー
03. MC:4
04. 牛乳飲め!
05. MC:5
06. 月の裏側のお姫様
07. サクラチレ
08. クリスマスツリーを切り倒せ!
09. 金の聖夜霜雪に朽ちて
10. アンコール
11. 曾根崎心中
12. 永久に続く五線譜

当日のセットリスト順に1曲残らず収録

―― これはおそらくボカロPのイベントでは初のライブアルバムですよね。

デP 初めてだと思いますね。

武井 聞いたことがないですね。そもそもバラ録りしましょうよと僕が提案したんですけど、それはこの界隈でライブって聞いたことがないし、是非ライブを聴いてみたいという気持ちもあって。

デPフェス!でキーボードを弾くデP

※ デPフェス当日はバンドの各パート、マイクの音をマルチトラックで録音していた。

―― せっかく出たことだし、こうやって聴けみたいなことはないですか。

デP それは僕から言うようなことなのかなあ。

―― いや、せめてパンツは脱いで聴けとか。

デP ああ、そういう話か! 面白いコメント準備できねえ!

武井 僕はデPの曲が好きで、ずっと聴いてきたんだけど、こうして新たに人間の歌い手によってライブで歌われたものを聴いてみると、ボカロで聴いていたときには表に出てこなかった、楽曲そのものの勢いがストレートに出ていると思います。ボーカリストが肉声で歌い切れている部分、精一杯の部分も含めて歌っている生々しさというのはボカロが持たない部分で、それはぜひ楽曲のファンには聴いてみてほしいですね。

―― 音楽評論家的にスキのないコメントをありがとうございます!

デP そう! オレはそういうことが言いたかったんですよ! さすがだわー。あ、そうだ、ひとつ言うなら。

―― はい。

デP 曲順に聴いてくださいと。

―― なるほど、時間と共に疲れていく様を。

デP 最後の方はヘロヘロになっていて面白いので。デPも最初の方は普通にやっているんですけど、途中から徐々にどうでも良くなっていって。

武井 実際に演奏した順に、その通り1曲残らず収録されているライブCDって、あんまりないですよね。

―― じゃあセットリスト順なんですか?

デP セトリ順で1曲も逃さず全曲入っているんですよ。

武井 1曲も捨ててないもんね。

―― それは素晴らしい!

デP 削ったのはMCだけ。強いて言えば「ニンジャ」のテイクワンは捨てましたけど。

武井 でも捨てられたことが分かるような構成になっています。

※ Japanese Ninja No.1のこと。デPフェス!の本番中にトラブルが発生し、演奏し直した。この時の担当ボーカリストはやまだん氏で、おかげでこの難曲を続けて2回も歌わされるハメに。

2回目の「ニンジャ」を歌わされるやまだん氏

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