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データセンターファシリティもIT管理者の責任範囲になる

青森のデータセンターを効率化したAPCのInfraStruxure

2011年08月09日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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8月8日、APCジャパンは同社が取り組む「次世代型データセンタインフラ」に関するメディア向け説明会を開催した。以前から同社が取り組むモジュラー型データセンター構想をさらに進化させるとともに、運用管理ソフトウェアの比重がより一層高まってきている点がポイントとなる。

総務からITへ!ファシリティ管理は移る

 まず概要説明を行なった同社のビジネス・ディベロップメント ディレクターの有本 一氏は、「これまでは専門知識を持った専任の担当者が担当するのが当たり前だったデータセンターファシリティも、今後はIT担当者の担当に含まれるようになっていくだろう」と語った。

APCジャパン ビジネス・ディベロップメント ディレクター 有本 一氏

 同様の例として同氏が挙げたのが「セキュリティ」と「電話」だ。これらは、以前の企業では総務部が管理するのが普通だった。企業にとってのセキュリティがオフィスへの不審者の立ち入りの防止などの物理的な施錠や警備を意味していた時代には、IT管理者とは無縁の話だったわけだが、現在のセキュリティは情報セキュリティの方がはるかに比重が重くなってきている。また電話に関しても、構内交換機(PBX)に対する内線電話機の物理的結線が中心だった時代から、IP電話のような統合ネットワークに変化した結果、IT管理者の管理対象に含まれるようになってきた。もちろん、こうした変化は対象となる「セキュリティ」や「電話」がITを活用するように変化してきた結果だ。データセンターファシリティは、もちろんITを利用するためのインフラなのだが、インフラと、それを利用して動作するITとの間には厳然とした区別があったのは間違いないだろう。

 一方で同氏は、データセンター/サーバルームに対して寄せられる要望はますます高度化していることも指摘する。「ビジネスが要請する24×365のIT可用性」や、ビジネスの変化に迅速に対応できる柔軟性や拡張性、さらに社会的要請ともなってきている高いエネルギー効率まで実現しようと思うと、ファシリティを独立のものと捉えるのではなく、ITシステムと一体で考える必要があるのも明らかだろう。しかしながら、データセンターファシリティが昔ながらの「電源設備」や「空調設備」のままでは、IT担当者の担当業務に素直に組み込むというわけにはいかない。さまざまな測定器具や工具一式を揃えて現場に出向かないと、というのでは、専任スタッフを用意せざるを得なくなる。データセンターファシリティをITと一体で運用するためには、ファシリティ側の運用管理もIT機器と同じような形でできるようになる必要がある。これが、同社が運用管理ソフトウェアの充実に焦点を当て、精力的に取り組んでいる背景であり、順を追って聞けばなるほど素直な一本道の論理だとも言える。

 また、APCでは以前から「モジュラーデータセンター」を推進してきている。これは、単にIT機器をコンテナに収容する、という単純な話ではなく、データセンターファシリティを構成するさまざまな機器/機能を標準化し、必要な分だけ組み合わせていくというアイデアであり、さらに運用管理のプロセスまでを標準化していくことで真価が発揮されるものだ。ファシリティに関しては規模の経済効果が大きく効くので、モジュール化されたコンポーネントをつ見上げる形で大規模化していくよりも、最初から大きなファシリティを構築する方がトータルのコストは下げられる。

モジュラーデザインの優位性

 しかし、通常のデータセンターではIT負荷の増加に伴って段階的に規模を拡張していく必要があり、最初から大規模なファシリティを用意すると、運用初期には低い利用効率を甘受しなくてはいけなくなる。将来を予測することは難しいため、必要に応じて必要な分だけの拡張が可能なモジュラー化のアプローチが現実的な最適解となり得るのはこのためだ。また、モジュラー化のアプローチを活用するのは、必ずしもコンテナが必要なわけではなく、さまざまなレベルでモジュラー化のアプローチを採ることは可能だ。同社のインフラソリューションは、こうした発想に基づいてラインナップの整備が進められている。

InfraStruxureの進化

InfraStruxureで高効率を実現した青森のデータセンター

 セミナーでは、第三世代となった同社のInfraStruxure製品群の特徴が紹介され、さらにユーザーとして富士通東北システムズ ビジネスモデル変革室 ITエキスパートの江口 則地氏による導入事例紹介なども行なわれた。

ユーザーとして事例紹介を行なった富士通東北システムズ ビジネスモデル変革室 ITエキスパートの江口 則地氏

 同社では既存データセンターの満床を控えた拡張に際してAPCのInfraStruxureを導入し、オフィスフロアをサーバルームとして転用するという形で初期投資を大幅に抑制しつつ、年間平均PUEの目標値だった1.37を達成できる見通し。青森という立地を活かした自然冷却の活用などで、3月にはPUE 1.19という実績も達成するなど、高レベルのエネルギー効率を実現している。

 InfraStruxure製品群が最初にリリースされたのは2003年で、この時点では「早すぎた」感もあったコンセプトだが、その後市場動向が追いついたと言える。現在では、モジュラー型データセンターを提供するベンダーは多数あるが、インフラを含めた統合的な運用管理ソフトウェアの整備にいち早く取り組んでいる点では、まだ同社が先行して築いたリードが埋まっていないことの証明といえるだろう。

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