本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
「Apple ID」の今後
当連載を読んでいる方であれば、アップルが「iTunes Store」や「App Store」、「Mac App Store」といった仮想店舗の運営に注力していることはご存知だろう。
しかも、入手経路は別でも同じ楽曲を保有していれば異なる端末でもダウンロードできる「iTunes Match」が導入予定など、今秋登場予定の「iCloud」および「iTunes in the Cloud」とも密接な関係がある。ダウンロード販売で売上を伸ばそうという単純な話ではなく、アップルという企業が提供する「サービス」の根幹にも関わる話なのだ。
トラフィック対策にも余念がない。日本時間の7月20日夜にダウンロード提供が始まった「OS X Lion」は、発売初日に100万ダウンロード突破という快挙を成し遂げている。OS X Lionの1コピーは約3.5GBだから単純計算で約3.5PB(ペタバイト)、単位を換えれば約3500兆バイトというトラフィックがほかの仮想店舗に影響しない形で増えた計算だ。Akamaiのような企業の協力あってのことかもしれないが、爆発的なトラフィック増加に備えて入念な準備がなされていたことは確かだろう。
一方、販売促進策は“様子見”に映る。アフィリエイトプログラムを用意して万遍なくウェブサイトでの露出を図るという手法は、ほかのダウンロードサービス事業者と基本的に同じだ。しかし、iTunes Storeなどファイルダウンロードサービスのプロバイダーは当初からLinkShareだが、2009年にApple Store(オンライン)の扱いのみValueCommerceへ移管されるなど、随時見直しの気配もある。
思うに、アップルは「Apple ID」のさらなる活用を目指しているのではなかろうか。Apple IDはクレジットカードなど決済手段と紐づいているIDであり、営利企業としてはこれを活かさない手はない。OS X Lionはその傾向が顕著で、Apple IDでユーザーを認識するだけでなく、新機能「Air Drop」のようにユーザーの証明にも使う。パスワードリセット時のユーザーIDとしても利用できるようになった。そもそも、OS X LionはApple IDがなければダウンロードすらできない。
それに、アップルはアフィリエイトの効果を疑問視しているかもしれず、「iTunes 10」で導入された音楽向けSNSサービス「Ping」はその代替策という見方もできる。具体的な姿は見えないが、今後Apple IDが販売促進に使われる可能性はゼロではないはずだ。
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