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Galaxy S IIのGPUは6割の力でもスマホ界最速!?

2011年07月25日 20時34分更新

文● 小西利明/ASCII.jp編集部

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今夏の新スマホでは最強の性能を誇る「Galaxy S II」。実は搭載GPUもスマホ界最強だった!?

 スマートフォンからタブレット、さらには携帯ゲーム機と、ARMコアのプロセッサーを採用する携帯端末は、次第に高度なグラフィックス性能が求められるようになっている。NVIDIAの「Tegra 2」しかり、クアルコムの「Snapdragon」もしかり。もはや高性能なGPUは、携帯端末にも欠かせない機能の一部となっている。

 もちろんARMコアの開発元である英ARM自身も、携帯端末でのGPU性能に対するニーズの高まりを理解している。25日、ARMは記者説明会を開催し、同社メディア・プロセッシング部門上級副社長のランス・ハワース(Lance Howarth)氏により、同社のGPU「Mali」シリーズに関する取り組みと将来像について説明した。

ARM メディア・プロセッシング部門上級副社長のランス・ハワース氏。右手に持つのは「Mali-400 MP」を採用する「Galaxy S II」

ARMのGPU「Mali-400 MP」は、
6割の力でもTegra 2より速い

 ARMが提供しているGPUは「Mali」と呼ばれるシリーズがある。現時点での最新版は「Mali-400 MP」と呼ばれるクアッドコアのGPUで、ハワース氏は同GPUを採用するサムスン「Galaxy S II」を例に挙げて、Androidスマートフォンでは最もグラフィックス性能が高いとした。

 特に、グラフィックス性能の高さが売りのTegra 2に対して大きな差を付けたベンチマークテスト結果を引き合いに出しながら、「(Galaxy S IIでも)フルスピードではない。パワーマネージメントのために60%程度で動かしている」と述べるなど、Maliシリーズの性能には相当な自信があるようだ。

Mali-400 MP搭載の「Galaxy S II」の速さを示したベンチマークテストの例。いずれも2倍前後という圧倒的な速さを示している

OpenGL系ベンチマークでの性能差。Galaxy S IIはNVIDIAやTIのARMコアプロセッサーよりも大幅に高性能だが、これでも実力のすべてではないという!

携帯端末向けGPUは500倍の性能が!?
次世代ではDirectX 11やOpen CLにも対応

 携帯端末向けGPUの今後について、ハワース氏はさらなる性能向上に対する要求とニーズの広がりがあることを説明した。まず性能については、ディスプレーの解像度が向上し続けている点と、コンテンツの複雑化といったトレンドがある。スマートフォンでも、WVGAクラスからWXGAクラスの解像度を備える製品に流れがシフトしつつあり、いわゆる4K2K(4000×2000ドット)クラスになると、画面解像度は20倍にもなる。

携帯端末向けGPUも、画面の高解像度化とコンテンツの複雑化により、処理性能は大幅に拡大している。ほんの数年前と比べても500倍にも達している

 また、特にゲーム分野でスマートフォンが広がり続ける現状では、グラフィックスAPI「OpenGL ES 1.1」の時代と比べて、現在ではコンテンツの複雑さは25倍にも達しているという。この両者を合わせると、携帯端末向けGPUに要求されるグラフィックス性能は、500倍にもなるというのだ。

 またニーズの面では、GPUコンピューティングの流れの到来を挙げた。画像処理やAR、暗号化や物理エンジン、ゲームAIといった処理を、CPUではなくGPUで処理するというパソコンや据え置き型ゲーム機のトレンドは、携帯端末向けGPUにもやってきつつあるというわけだ。

Mali-T604の概略図。4つのシェーダーコアと共有2次キャッシュを備え、2ギガピクセル/秒、68GFLOPSもの演算能力を備えるという

 それを踏まえてARMでも、Maliシリーズのさらなる強化に向けて開発を続けている。現在では「Midgard」アーキテクチャーと称する一連のシリーズを開発中で、その第1弾となるのが「Mali-T604」であるという。グラフィックスAPIとしては、現在の業界標準である「OpenGL ES 2.0」に加えて、次世代のOpenGL ES「Halti」、そしてARMコア版が登場する「Windows 8」をターゲットに、DirectX 11にも対応する予定である。

 GPUコンピューティング面でも、Mali-T604は初めてそれを念頭に置いて開発されたGPUとなる。「OpenCL 1.1」「Android Renderscript compute」「DirectCompute」といったAPIにも対応の予定とのことで、GPU演算能力は68GFLOPSをターゲットにしているという。

Maliシリーズのロードマップ。毎年新しいGPUを投入し、急激に性能を拡大していくプランのようだ

Mali-T600シリーズの概要。DirectX 11やOpenCL 1.1、DirectComputeにも対応するが、省電力性能ももちろん重視されている

 Mali-T604シリーズは、年内に最初のエンジニアリングサンプルを出荷するとのことで、実際に採用した製品が市場に登場するのは2012年後半になると、ハワース氏は予測を示した。2012年の年末商戦では、今よりもリッチなグラフィックを軽快に楽しめるスマートフォンが登場しそうで楽しみだ。


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