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ここからパソコンの新しい歴史が始まる

OS X Lionが切り拓く未来のコンピューティング(前編)

2011年07月20日 23時00分更新

文● 林信行

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「保存」機能をなくすことで、多くの快適さが生まれた

 アップルは、LionがiPadから多くを学んだOSだと公言している。その意味では、人類が作業環境を紙からパソコンに移したことで誕生した、「保存」という意味のない因習を取り除いた「オートセーブ」(自動保存)機能も意義深い。

 しかも、単なるオートセーブではiPadと同じということで、高性能で大容量で大画面なパソコンの特徴を生かした「バージョン」、つまり書類を編集過程の好きな状態まで戻して、そこから削除してしまった文章や図を復旧できる機能まで追加した。この機能も素晴らしく便利だ。

書類の履歴を記録する新機能、「バージョン」

 慣れてくれば、もっと大胆な試行錯誤が増えて作業のスタイルそのものまで変えてしまいそうで期待が持てる。

 実際に使ってみると、現在と過去の書類のうち、クリックしたほうが大きく表示されて選択操作などがしやすくなったり、バージョン比較表示のまま原稿書類に変更を加えたりできる(つまり、過去の書類を参考にしながら現行書類に書き加えることが可能)。ユーザーがこの機能をどのように使うかという点も含めて、非常によく練られている。

バージョン比較表示のまま原稿書類に変更を加えたりできる

 さまざまな書類を「保存」すべきか否かの判断をユーザーに問いただす、という余計なステップがなくなったおかげで、アプリケーションの終了も簡単になり、アプリケーションの再開もシンプルになった。Lionのアプリケーションでは、その内容だけでなく、どこに書類ウィンドウを開いて、どんなパレットを使いながら作業をしているかといった作業状態も常に保存されている。

 そのため、アプリケーションを何らかの理由で終了した後で再び起動すると、前回の作業状態がすぐに再開される(未保存でファイル名がついていない書類も、ちゃんと開かれる)。

 そもそも、「アプリケーションの終了」なんていう操作が本当に意味があることかと思えてくる。

 パソコンに詳しい人は、メモリーを解放するために、アプリケーションはこまめに終了する必要があるなどと考えていたりする。しかし、もしそういった問題が解決できるなら、アプリケーションが起動中か終了したかなどをユーザーに意識させることなく、必要に応じていつでも前回の作業状態が画面に現われるのが望ましい。Lionは、そんな未来をまさに現実のものとした。

 その表れのひとつとして、Lionの「Dock」の環境設定では、ドックの起動済みアプリケーションの下に表示されるインジケーターランプを消すオプションも用意されている。つまり、どのアプリケーションが起動済みで、どれが終了しているかなんて、忘れてしまおう、という設定だ。

 オートセーブ、バージョン、再開といった書類管理系の新機能は、アプリケーション側が対応していないと利用できない点に注意してほしい。使い慣れてしまうと、あまりにも心地よく便利で、未対応のテキストエディターやウェブブラウザーは、だんだん使う頻度が減ってきてしまうはずだ。


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