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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第31回

シェア低下のBlackBerry 窮地のRIMは社員からも批判の声が

2011年07月13日 12時00分更新

文● 末岡洋子

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アメリカでのシェアが急落で
Android、iPhoneに続いての3位に

日本ではNTTドコモからリリースされている「BlackBerry Bold 9780」。細かな改良は進んでいるが、そろそろ端末やOSに根本的な刷新が必要な時期にも思える

 BlackBerryで知られるカナダのResearch In Motion(RIM)を巡って否定的な話題が続いている。苦しい業績発表や新端末のローンチがずれ込む中で、6月末には同社社員が匿名で自社幹部に向けた公開書簡を出し、公に改革を求めた。さながら2月にリークされたNokiaの“がけっぷち”社内メモを思わせるものだった。

 RIMが6月16日に発表した2012年第1四半期の業績報告書によると、売上高は前年同期比16%増の49億ドル、利益は同9%減の6億9500万ドルとなった。同期に1320万台のBlackBerry端末を出荷。同社初のタブレット「PlayBook」は50万台を出荷したと報告している。

 この業績発表の前にRIMは見通しの下方修正をしていた。だがRIMは組織再編計画も明らかにし、第3四半期からは従業員のレイオフも行なうとした。また、最新端末のローンチについても、予定を延期して8月後半とした。RIMは2010年夏に「BlackBerry Torch」を発表して以来、メジャーな製品発表を行なっていない。

 RIMが苦境にあることは、数値からも明らかだ。同社はこれまでアメリカで大きなシェアを持ってきたが、4月の調査ではAndroidにトップの座を奪われた。5月にはiPhoneにも譲って3位。シェアは24.7%となり、2月の28.9%から4.2ポイントのマイナスとなる(comScore調べ)。

フルタッチ型が広まる市場の流れに乗れず
企業ユーザーも流行のスマホを併用している

 RIMに何が起こっているのか――RIMの問題は、iPhone登場がもたらしたスマートフォン市場の変化についていけなかったNokiaの問題と類似している。QWERTYキーボードを搭載した横広いストレートタイプを特徴とするBlackBerryはラインナップ内でデザインが類似している点が以前から指摘されていた。

 これに加え、iPhoneやAndroidといったフルタッチ型端末が実現する操作性という点でも出遅れた。さらにはサードパーティのアプリケーションが少なく、エコシステムという点でも大きく劣っている。以前、IHS iSuppliのアナリストがプレゼンで使った資料では、「BlackBerry AppWorld」(BlackBerryのアプリストア)の月間ダウンロード数は4500万。iPhoneの月間ダウンロードは3億2000万で、Androidは2億、Nokiaは9000万だった。

 プッシュ型電子メール、セキュリティ、「BlackBerry Messenger(BBM)」という強みから、BlackBerryはいまでも大企業で使われているが、現実には多くのBlackBerryユーザーは他の端末も併用している。コンシューマライゼーション(コンシューマが企業のITトレンドを牽引し、従業員がプライベートで使っている端末をビジネスで利用したり、企業のITがコンシューマの影響を受けること)、ほかのスマートフォンOSの企業向け機能の充実(特にiPhoneが狙っているようにみえる)という2つのトレンドを考慮すると、このままではBlackBerryのポジションはさらに危うく見える。

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