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最新エンタープライズストレージの実力を探る 第19回

データ保護や管理の向上を実現する

データを守るRAIDとストレージのネットワーク化

2011年07月15日 06時00分更新

文● 渡邉利和

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ストレージのネットワーク化を実現するSANとNAS

 現在市場で主流を占めるエンタープライズストレージは、ほぼSANとNASの2種類に大別できる。どちらも、複数のサーバーから共有されるネットワーク型ストレージであることは共通だが、実装はずいぶん異なっている。

 NAS(Network Attached Storage)は、ファイルサーバーの機能を独立したストレージデバイスという形に切り出したものと見てよい。いわば、ファイルサーバーアプライアンスである。論理的には、筐体内に多数のHDDを内蔵したサーバであり、このサーバのDAS領域をファイルサーバとして公開している、という形だ。そのため、NASは内部的にはサーバに相当する“NASヘッド”と、ディスクアレイ部分の大きく2つの要素で構成されている。

SANとNASの違い

 NASのHDDは、NASヘッドのローカルストレージという形になっており、この領域に外部のサーバがアクセスする場合には、標準的なファイル共有プロトコルを使ってファイル単位でアクセスを行なうことになる。一般的にサポートされているプロトコルは、NFS(Network File System)とWindowsファイル共有プロトコル(SMB:Server Message Block/CIFS:Common Internet File System)の2種類だ。

 サーバーはNASヘッドとTCP/IPベースの通信を行ない、ファイルを指定して読み書きを行なう。実際のストレージ領域を管理するのはNASヘッドの役割であり、サーバーとNASヘッドの間では抽象化されたファイル単位の処理が行なわれる。サーバーからは、ファイルがNASのストレージ領域のどこにどのような形式で記録されているのかといった詳細については気にする必要がない。これはつまり、NASの内部ではサーバーとは互換性のない独自のファイルシステムを使っても構わないということにもなる。ファイルシステムを持つという点もNASとSANの典型的な違いの部分になる。サーバーとの互換性を気にせず独自のファイルシステムを使えることから、NASではベンダーごとに独自の工夫を凝らしたファイルシステムを実装し、一般的なサーバーのファイルシステムよりも高度な機能を実装している例が目立つ。

 一方、SAN(Storage Area Network)は、サーバーのIPネットワークとは独立したストレージ専用ネットワークを構築する、という発想で設計されている。現時点で主流といえるFC-SANの場合、SANスイッチと呼ばれる専用デバイスを中心に、ファイバチャネルファブリックと呼ばれる光ファイバベースのスター型ネットワークを構成する。

 また、SANのもう1つの特徴は上位プロトコルにSCSIを利用している点だ。つまり、サーバーから見るとSANストレージはSCSIバスに接続された外付けHDDのように見えるということになる。いわば、HDD上のセクタがそのまま見えているような形であり、NASのファイル単位のアクセスとは異なり、HDD上の物理的なブロックを単位としたより低レベルのアクセスとなる。当然、このHDD上にファイルシステムを構築するのはサーバーの役目であり、SANストレージ側ではファイルシステムには関知しないのが一般的なのだが、現在では内部的に独自のファイルシステムを構築した上でこの構造を隠ぺいし、サーバ側には仮想的なセクタ構造を見せる、といったNASとのハイブリッド的なSANストレージも存在する。ともあれ、SANの場合はサーバーから見れば内蔵HDDとほぼ変わらない使い勝手で利用できることになる。

Ethernet SANの元祖iSCSIと今後対応するFCoE

 SANとNASは、接続に利用されるネットワークが異なることに加え、ファイルアクセスかブロックアクセスかという違いもある。このため、一般的には非構造化データの共有ストレージとして、ファイルサーバー的な用途にはNASを、データベースのような構造化データや基幹業務システムのストレージとしてはFC-SANを、という形で使い分けられるのが一般的だ。

 なお、NASは一般的なEthernetネットワークで接続され、FC-SANはストレージ専用のFCファブリックに接続されるわけだが、両者の折衷案的な形態としてiSCSI/IP-SANと呼ばれるストレージもある。これはSCSIのプロトコルをカプセル化してIPネットワーク上を流すといった形だ。独立した専用ネットワークではなく、IPネットワークを使うため、手軽に構築でき、SANスイッチやFCファブリックを用意する必要がない点はメリットだ。しかし、ベストエフォート型ネットワークであるTCP/IPおよびEthernetの性質上、スループットが保証されず、パフォーマンスにバラツキが生じるという点はFC-SANに劣るとされる。

 現在では最新規格としてFCoE(FibreChannel over Ethernet)に対応した製品が出そろいつつある。これはEthernet上にFCプロトコルをそのまま流す形にしたものだ(厳密には、Ethernetフレームにカプセル化している)。実際には、FCoEは従来のEthernetそのままではなく、IEEE DCB(DataCenter Bridging)というFCoE用に拡張された上位互換プロトコルを利用しているため、ケーブルはEthernet用のケーブルそのままでよいが、NIC(FCoEではCNA:Converged Network Adapterと呼ぶ)はFCoE対応のものを用意する必要がある。

iSCSIやFCoEの説明で一部事実と異なった説明がある旨、読者からご指摘いただきましたので、訂正いたします。具体的には図においてSANスイッチとハブが直結されている点、iSCSIがFCプロトコルをカプセル化しているという記載のほか、FCoEの普及や速度に関する一部の主観的な記述です。関係者および読者には、お詫び申し上げます。本文は訂正済みです。(2011年7月18日)

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