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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第61回

CD時代から30年、音楽業界に何が起きたのか?

dip in the poolが語る“14年間の沈黙とインターネット”

2011年06月18日 12時00分更新

文● 四本淑三

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虚像が機能しなくなった。
だったら等身大の音楽でいいじゃん

―― 90年代の終りにはインターネットも普及して、今のような状況の兆しも見えていたと思うんですが、それはどう眺めてました?

木村 今の状況までいくとは想像していなかったね。ファイルをアップロードして、エンジニアにラフミックスを作ってもらうとか。そのくらいの利便性しか考えていなかった。

―― 音楽メディアとして機能するとは思っていなかった?

木村 最終的にはそうなるだろうとは思っていたけど、ここまで短時間で今のような状況になるとは予想していなかった。

甲田 向こうにいる間は、ほとんど触ってなかったもんね。私のほうが触っているくらいの感じだった。

myspaceページはつくっている

―― 甲田さん、パソコン触るんですか。

甲田 うん、ちょっとね。

木村 だって自分のMacを持ってるしね。

―― 何をやるんですか?

甲田 メールチェックしたり。それと、私は事務所にも入っていないし、探しにくいみたいなので。だから「ここにいるよ」と言わないとまずいんじゃないかと感じて、サイト作ってもらって。自分から発信する場を作っておかなければならないと思って。

オフィシャルWebサイト「NEW KODA PROJECT」

―― それで東京に戻ってきて活動再開と。今の時期、対インターネット戦略みたいなものは考えていますか?

木村 ないです。ノーガードですよ。

―― たとえば少し前のロイターの記事に、ソーシャルメディアに関わるとアーティストの寿命が縮まる、というのがあったんですけど。

甲田 あ、ごめん。本当の命じゃなくて?

木村 わっ、それは怖い!

甲田 いや、本当の命も縮まりそうだなと思っちゃって。

―― インターネットは魂を吸い取ったりはしませんよ。

甲田 だって疲れない? なんていうか、速く生きちゃうじゃん。

木村 うん、そうだね。僕はその元記事を読んでいないんだけど。

―― 昔から言われているような、メディアコントロールの話ですね。露出が増えて等身大になれば、虚像としての価値も下がるという。

木村 なるほど。いまだに虚像を維持しようと思っているミュージシャンは、(ネットに関わると)命を縮めるだろうと思うけど。それはテレビ全盛時代の、テレビというメディア自体も同じだと思うのね。ある時からテレビが夢の箱のような構造を自ら壊し始めたじゃない。自分のそれを含めて舞台裏ネタを垂れ流すし、アーティストもバラエティにまで出るし、それで虚像が機能しなくなった。だったら等身大の音楽でいいじゃん、開けてみればどうせ同じだし、みたいな流れもあるんじゃないかな。

(次ページに続く)

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