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写真で見る、レノボの新・大和研究所

ThinkPadブランドを支える、過酷なテストたち

2011年06月13日 09時00分更新

文● TECH.ASCII.jp

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ワイヤレス技術やEMC試験のテストも実施

 次に青いとげ状の電波吸収体で壁を覆った無線性能試験を行う部屋。ここでは、高性能な無線LANアンテナを開発するための試験などが行われている。アンテナはオーダーメイドと言っていいほど機種によってサイズや形状が異なる。制約のあるアンテナのスペースで最上の性能を得るためにはどうすればいいかを検討する部屋だ。

基準アンテナから電波を発信し、ThinkPadの受信感度がどうかを調べている。360度回転するので角度によって感度に差が出ないかも確かめられる

電波の強度などをシミュレーションし、実機を試作、テストする

電子部品から発せられる電磁波が干渉することも、ワイヤレス通信の敵。シールドボックスに入れて、ノイズ源がないかをチェックする


静電気、高温/低温、携帯電話の電波など環境からの影響も

 どのような環境でも安定して動作するという点も重要なポイントとなるが、実は身の回りに当たり前のようにあるケータイもパソコンを誤動作させる要因になることをご存知だろうか?

 EMC(イミュニティー)などと呼ばれるもので、例えば携帯電話を天板に置いた状態で着信があるとスピーカーから異音が発するといったクレームが過去にあったという。これ以外にも対策が不十分だと、ハングアップやシャットダウン、マウスカーソルが不安定に動くなどといった不具合が生じる可能性があるとのこと。

EMC(イミュニティー)試験を行うための電波暗室を用意。電波は目に見えないが、電子機器に干渉を起こす。右写真はダイオードを敷き詰めたところに電波を当てると干渉して光るという概念を示すための簡単な実験

 レノボでは電波暗室でこうした不具合が起きないよう、きちんとしたシールドなどが行われているかを確認する検証を行っている。

 また静電気も厄介な代物だ。最近では、低消費電力化の流れの中で、チップセットの電圧が下がってきたため、従来は起こらなかった問題が生じやすい状況が生まれている。写真はUSB機器や本体に静電気を意図的に帯びさせて不具合が出ないかを確認する試験。指などで触れたことを想定した間接放電(8000V)と指輪など金属が触れたことを想定した直接放電(4000V)の二種類の試験を実施している。

写真左と中央はUSB機器の静電気が害をなさないかを見る実験。写真右は本体に静電気を帯びさせ、他の機器に悪 影響を与えないかを見る実験

 動作温度や湿度による劣化度合いなども確かめている。電子機器は高温の環境下では劣化が進みやすいということで、熱負荷をかけた加速度試験を行ったり、逆に低温で性能が下がりやすいバッテリーや液晶、HDDといった部材の検証も行う。

 例えば量産前の数十台の機器を取り上げて、使い始めてから30日、90日後の状態を加速度試験で実施。初期保証ができるかを見る。

こちらの部屋は高温あるいは低温の環境に長時間さらして耐久性を見るための部屋。取材時には室温40℃、湿度10%の状態になっていた

飛行機の積み荷は気温0℃前後、貨物船のコンテナは50~60℃程度になるそうだが、そうした条件で輸送しても問題がないかを見るストレステストも実施している

 最後に紹介するのが電磁波を測定するための施設。発泡スチロールと電波吸収体に覆われた部屋に大型のアンテナを設置し、値を計測する。

電磁波試験設計ラボ

 レノボではこのような試験を量産前に最低2回は実施したうえで製品を市場に送り出しているという。最近ではシミュレーションを利用した設計が進歩しているが、研究所の施設は設計が正しいかどうかの判断のために活用されている。

 中でも自社開発のホコリ試験のための装置や角度落下試験の詳細さなどは同社の自慢のようだ。また、今回紹介した試験内容は、全体の一部に過ぎないという点も強調しておこう。

 またこうした厳しい試験を経ても全く不具合のないマシンが登場するわけではないという点も重要だ。大事なのは不具合があった際に、それに真摯に取り組み、再発を防ぐノウハウをきちんと吸収していくこと。これだけのテストがあるということは、それだけのトラブルを克服してきたことの証明でもある。世界のThinkPadを支えているのが、大和研究所の検証施設なのである。

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