秋葉原では本気の人たちが勝てる
―― 日本のファンクはアイドルソングであると。でも音楽作らずに社長になったんですよね。
もふくちゃん 最初はクリエイターになりたいんだと思っていたんですが、単純に新しいものさえ見れれば、自分で作ってなくてもいいという事に気付いたんです。それに、昔のブログとか、過去の大学時代のものを見ていると、ずっと「私、社長になる」って書いてあるんですよ。
―― 覚えてなかったんですか。
もふくちゃん この間発見して、何だろうって。たぶん本気でその時は思ってなかったはずなんですけど。なんていうか……やっぱり言霊ってあるんだなって。
―― ……あるみたいですね。アイドルのプロダクションという発想もそこですか?
もふくちゃん そうですね。それに日本のオリジナルで輸出できるものというと、今はアイドルだったり、アニソンだったりなのかなあと思います。
―― 当然、海外展開も考えていると。
もふくちゃん 7月にうちの女の子が「アニメ・エキスポ2011」※にアニソンを歌いに行くんです。去年からブラジルに行ったりシンガポールに行ったりいろいろあったんですけど、来年からはコンテンツを出せるようにしたいなと。
※ 7月1日からロサンゼルスで開催される。ディアステージの黒崎真音がゲスト出演する予定。
―― MOGRA以降はアキバのイメージも変わった気がするんですが。
もふくちゃん ちょうど端境期にスタートしたので、そう見えるかも知れませんけど。個人的にはAKB48の影響が一番大きいと感じています。若い子たちが、あれで秋葉原はかっこ悪くない、オッケー! ということになった。今までは閉じたコミュニティだったものが、いろんなジャンルの人が入ってきて。最近ではファッション業界が動き始めて、あの資生堂さんがフィギュアの髪型を再現するみたいなことを始めてます。※
※ ディアステージの「でんぱ組.inc」がフィギュア風のウイッグを付けて登場。TSUTAYA六本木、渋谷パルコパートIロゴスギャラリー等で展開。公式Webはこちら
―― それはすごい。ただ、あちこちから参入が増えると、ライバルも増えて大変じゃないですか。
もふくちゃん 増えることがあっても、儲かんなくてやめちゃうんですね。結局、私が秋葉原を好きな理由もそこにあって。生半可なヤツらは上手くいかないんですよ。秋葉原って本当にコンテンツが面白くないとダメなんです。表面加工だけ上手くやっても、それでは文化的に回っていかない。
―― お客さんもファッションとして消費するのではなく、コンテンツを楽しみに来るわけですよね。
もふくちゃん 正にその通りです。まだ本気の人たちが勝てる純粋な街だなと思いますね。そこを分かってくれるんです、秋葉原の人たちは。ブランドじゃなくて中身で見てくれる。例えば『ひぐらしのなく頃に』(ゲーム)って、元のイラストは稚拙だったりするけど、でも脳内でストーリーを補完できるんですよ。すごく素敵な世界に。そういうコンテンツの核を見いだせるお客さんてすごいなと思いますね。
ディアステージがVOCALOID3に音源を提供
この取材から2日後の6月8日、遂にヤマハの新VOCALOIDエンジン「VOCALOID3」が発表された。これにディアステージのアイドルが音声ライブラリを提供するという。
VOCALOID3はEditorと音声ライブラリを分離した設計で、日本語や英語以外にも、中国語、スペイン語、韓国語に対応した。これにより様々なベンダーが音源ライブラリの制作に名乗りを上げており、ディアステージはその中の一企業ということになる。
秋葉原のAKIHABARA 85で行なわれた発表会には、もふくちゃんも社長として登壇。インタビューとは打って変わって社長らしくかしこまったプレゼンによれば、2次元のボーカロイドと3次元アイドルが融合した「ボーカロイドル」を目指すらしい。詳細は未定ながら、有名声優や歌手を起用する他社の音声ライブラリに対して、どのようなユーザーアクションが起きるかに注目したいところ。
なおVOCALOID Editorは2011年9月末発売予定、歌声ライブラリは2011年9月末から各社順次発売という予定になっている。
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。
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