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Apple Geeks 第42回

この秋登場、「iOS 5」のココに注目

2011年06月09日 16時30分更新

文● 海上忍

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「コミュニケーション」能力の強化

 アップルは、新しい「コミュニケーション」の姿も模索しているようだ。

 iOS 5では、シングルサインオンを実現するAPIを実装することで、TwitterのOSレベルでのサポートを実現した。アップローダーなどの外部サービスを使わずに、OS標準のアプリから写真や位置情報をツイートできるようにもなったという。今や数多あるTwitterアプリの開発者には酷な話かもしれないが、Twitterを通じたやり取りがOSの標準機能化することは、端末のコミュニケーション能力強化という意味で歓迎されるべきだろう。

TwitterがOSレベルでサポートされるなど、テキストメッセージングの強化が目立った

 「iMessage」の投入も、相当のインパクトがありそうだ。携帯電話回線を利用したメール(SMS)があまり普及していない日本(関連記事)では、特に関心を持って受け止められないかもしれないが、海外は事情が違う。グループチャットアプリ「Beluga」がウケたのも、そこにひとつの理由があるのだ(Facebookとの親和性が高いことも大きい)。また、3GでもWi-FiでもOKなうえ、メッセージの開封確認機能をも備えるiMessageが、「BlackBerry Messenger」(BBM)が強い企業向け市場でどう戦うかも見物だといえる。

Beluga
作者 Beluga 価格無料
ファイル容量2.3MB カテゴリソーシャル
ネットワーキング
対応デバイスiPhone/iPod touch
およびiPad互換
対応OSiOS 3.1以降

「PC Free」もLionの低価格化も必然だ

 iOSデバイスがMac/Windowsなしに利用可能になる「PC Free」を発表したとき、基調講演会場では大きな歓声があがった。中国やイタリアではPCを持たないユーザーが多い、との資料を引きつつ紹介された「Post PC」のコンセプトは、「ついにこの日が来たか」という感慨の一方で、「そうあるべきだろうな」とも感じさせた。

 iOS 5では、Wi-Fiを介することで、ソフトウェアアップデートが単独で実行できるようになる。iTunesに接続する必要はなくなり、配布されるアップデータも差分のみとなる。“母艦”から自立させるにあたっては、カレンダーの作成/削除や写真編集機能を持たせるなど、アプリの仕様見直し(複雑化)も伴ったようだが、進化の方向としては妥当だろう。

 ただし、このPC Freeというコンセプトも、「iCloudありき」であることを忘れてはならない。「Apple ID」を登録しておけば1日1回自動バックアップが実行され、カメラロールやアプリデータなど日常的に使うデータもWi-Fi経由でiCloudに転送される。

 ここまでくると、「PC Free」が“PCからの独立”を指すだけではなく、iOS 5において「ハブ」をPCからクラウドに移行させる仕組みの一部だと改めて理解できる。iOSデバイスがクラウド端末化することのほうが、より重要な意味を持つのだ。

「PC Free」は、PCからの独立というよりも、クラウド端末化としての側面こそ注目されるべき

 となると、今後アップルという企業がクラウドに収益源を求めるのは必然といえる。同じくiCloud対応のOSとなるはずの「OS X Lion」が、(アップグレード版とはいえ)わずか2600円で提供されることもこれで説明がつく。

 確かに、iCloudは無償提供されるようだが、それは現在発表されているフィーチャーに限っての話。かつて、アップル提供のインターネットサービス「iTools」が「.Mac」に名を変えて、基本サービスが有償化されたことは再現されないにしても、iCloud上に魅力的なサービスなりオプションなりを追加する方向で課金を促す可能性は、大いにありうる。

 これまでアップルの新機能/新プロダクトといえば、独立したソフトウェア/ハードウェアにより実現されてきたが、今後はクラウドとセットで提供される……iOS 5はその呼び水なのだと筆者は理解している。


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