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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第95回

ネットの「熱さ」、現代アートに――藤城嘘とカオス*ラウンジ

2011年06月09日 12時00分更新

文● 古田雄介(@yskfuruta

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「3月11日以後」のインターネットに注目


―― 最後にもうひとつ。藤城さんはネットのカルチャーを通して、日本の最新の価値観のひとつを切り取っていると思いますが、ネットの中に「次の動き」のようなものは感じたりしますか? ニコニコ動画のMADやPixivのイラストなどの“次”という意味で。

藤城 少し意味合いが逸れるかもしれないですが、やっぱり3.11の大震災の存在が大きいと思います。創作の場に限ってみても、地震が起きてから大勢の人が同時に大きな不安を抱え、「もし地震がなかったら」という並行世界(想像上のもうひとつの世界)ができてしまったと思うんです。作り手としても絶対に目をそらしたくはありません。

 そこから、いままでと違うアニメーションやキャラクターの需要が発生したり、あるいは、祈りを捧げる対象としてのキャラクター信仰が生まれたりするかもしれません。そういう変化がちょうど起きているところだと思うので、注意深く追っていきたいですね。


―― 新たなサービスが出る前に、創作物の役割が変わってくる可能性があると。

藤城 もともと日本のネットは独自の動きが起きやすいですから、可能性はけっこうあると思います。そしてその動きを追っている人は世界中にいて、場合によっては海外にも広がっていくのかなと。ただ、日本のそうしたカルチャーの動きを世界に発信するメディアはまだ充実していません。だから、芸術分野に限定されますけど、僕らが発信していこうという計画もあったりするんです。スマートフォンのアプリを媒体にしたりして、海外の人がアートを通して変化を実感できるような。


―― なるほど。では、そのさらに数年後の展望も含めて、今後の目標を教えてください。

藤城 うーん……ベタですが、新しい何かを見せて楽しんでもらうというところを核に、自分なりに表現したり編集したりしていきたいです。そして、世間にそこまで馴染みのない分野だからこそ、職業として成り立たせていきたいと思っています。ネットには“嫌儲”の人が多いので、このスタイルで食べていくなら今以上に向かい風が強くなると思いますが、とにかく逃げずにケースバイケースの解決策を探っていくのが一番建設的なのかなと考えています。パッとすべて解決することはないでしょうから、ノウハウを積み重ねていければ……たぶんそうしないと駄目でしょうしね。


―― 頑張ってください。ちなみに、アーティストとキュレーターのどちらの比重が大きくなりそうですかね?

藤城 うーん、カオス*ラウンジの役割からして、キュレーター的な仕事には向き合う必要があると思いますね。……ただ、芸術だけが専門分野になると表現の幅が狭まったりするので、学生らしくどっかに就職したほうがいいかなという考えもありまして。だから、核は持ち続けて、時期によって表向きはいろんな仕事をしているかもしれません。卒業はまだかなり先のことになりそうですけど……(笑)。

カオス*ラウンジについて、「2010年は黒瀬さんに頼りすぎているところがありました。なので、2011年からはもっと自分の言葉で発信していこうと意識しています」と意欲的に語っていた



古田雄介

筆者紹介──古田雄介


 元建設現場監督&元葬儀業者&現古銭マニア&毎週仕事で秋葉原と都内量販店に足繁く通う毎日を送る現デジタルライター。「古田雄介のブログ」ではみなさんのお勧めサイトを募集中です。ツイッターIDは@yskfuruta




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