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COMPUTEX TAIPEI 2011レポ 第16回

2014年に100倍の性能!? 進化するTegraの秘密とは?

2011年06月02日 13時56分更新

文● 塩田紳二

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Tegra 2の5倍の性能を持つという
次世代Tegra「KAL-EL」

Tegraシリーズのロードマップ。すでに「KAL-EL」のサンプル出荷は始まっており、2012年にはTegra 2の10倍近い性能を持つ「WAYNE」が、2014年には100倍近い性能を持つ「STARK」を発表する予定

 Tegraのロードマップだが、上掲の写真のように、2011年に製品が登場するコード名「KAL-EL」は、 現在のTegra 2の5倍の性能を持つ。そして2014年には、現在のTegra 2の100倍近くまで性能を向上させるという。

次世代Tegra「KAL-EL」の主な特徴。4コアとなり、GPU性能も向上。2560×1600ドットという高解像度をカバーできるようにするという。この解像度は、300dpiを超える高密度の液晶パネルで、10インチクラスのタブレットを作るときには必要になるのだという

お詫びと訂正:掲載当初、誤った画像が掲載されておりました。ここに訂正するとともに、お詫びいたします。(2011年6月2日)

 ちなみに、「KAL-ELの製品名はTegra 3なのか?」とたずねてみたが、Tegraブランドは使い続けるものの、まだ名前を確定したわけではないとのこと。

 KAL-ELは、ARMアーキテクチャーのCPUコアを4つ持つクアッドコアプロセッサーと、NVIDIA製のGPU(12コア)を組み合わせたものになる。レイフィールド氏に確認したところ、プロセッサーコアはARMが開発した「Cortex-A9」であるという。また、公式には発表していないものの、動作周波数は1.5GHz程度だということだ。

 そうなると、1GHz動作のCortex-A9を2つ搭載する現行のTegra 2と比べると、コアの性能は3倍にしかならない。それにも関わらず「KAL-ELは5倍の性能を持つ」と言うのは、GPUの性能が加味されているからだ。Tegra 2のGPUは8コアだが、KAL-EL搭載のGPUは12コアであり、性能比で約1.5倍となる。これを合わせて5倍(≒4.5=3×1.5)ということなのだと思われる。

 なおCortex-A9は、ARMプロセッサーで初めて「アウトオブオーダー実行」を可能にしたプロセッサーである※1。それまでのARMプロセッサーは、とにかく消費電力を増大させない前提で性能を向上させてきたが、このA9で初めて従来のインオーダー実行をやめて、アウトオブオーダーを採用した。さらに、すでに発表されている「Cortex-A15」プロセッサーでは、A9の倍の命令発行が可能となる。
※1 スーパースカラーは「Cortex-A8」で採用された。関連記事はこちら

Project DenverはTegraにあらず?

NVIDIA GPUを大規模に使った東京工業大学のスパコン「TSUBAME」(2008年12月の写真)

 2011年1月に発表されたばかりのProject Denverだが、レイフィールド氏によれば、これは「GPUとARMプロセッサーを組み合わせて、スーパーコンピューターなどを作るためのもの」で、将来のTegraに搭載することを目的に、開発するのではないという。これはなぜか?

 NVIDIAがTegraとは別に進めているGPU戦略では、GPUをベクトル演算など、いわゆる「GPGPU」用途に使う方向性で進んでいる。そのシステムで制御を担当する「汎用プロセッサー」として考えられているのが、Project Denverなのだという。現在の大規模GPGPUシステムでは、汎用プロセッサーにインテルやAMDのx86 CPUを使っているが、これをNVIDIA製のARMベースプロセッサーで置き換えるというわけだ。

 だがそうなると、2014年に登場して現在のTegraの100倍近い性能を持つという「STARK」には、Project Denverとは別のプロセッサーが使われることになる。

 次世代ARMコアとなるCortex-A15プロセッサーは、コア単体でCortex-A9の2倍の性能を持ち、最大動作周波数は2.5GHzを想定。構成にもよるが、8コア程度までのマルチコア化が行なえる。また、製造プロセスとしては28nmを想定しているが、22/20nmにも対応可能としている。そうなると、もう少し動作周波数を引き上げることも可能だろう。仮に3GHzが可能だとすると、以下のような計算になる。

  • アーキテクチャーで2倍
  • 動作周波数で3倍(1GHz→3GHz)
  • コア数で4倍(2コア→8コア)

 つまり24倍の性能向上は、コアアーキテクチャーの変更により可能となる。しかし、これでもさすがにTegra 2の100倍近い性能を出すのは難しいだろう。

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