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高校生のデジタル漫画日本一は誰だ?

デジタルまんが甲子園にちばてつや・加藤英美里・AKB48登場

2011年06月01日 17時15分更新

文● ASCII.jp編集部

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ちばてつや氏「私はまだデジタルの門をちょっと開けたくらい」

 イベント終了後、ちばてつや氏に漫画のデジタル制作について伺った。

―― デジタルまんが甲子園に集まった作品をご覧になっての感想は?

「デジタルは漫画を描くための新しい筆記具だと思っていて、こういうものを駆使して楽しみながらうまくなるといいですね」(ちばてつや氏)

ちばてつや 「時代は変わっているんだろうなとは感じていたのですが、今回のイベントでそれを如実に感じました。

 今後はデジタルを使った作品が主流になっていくのでしょうし、漫画を教える立場の者として、学生たちに覚えてもらって、こういう世界を知ってもらう機会を早急に設けねばと実感しました。

 ただ、(絵の)上手い子は増えたけど最後はセンスと演出次第で、それはデジタルとかアナログとか関係なく漫画を描くためには大事なものです。これは日本人が昔から持っていたセンスで、『鳥獣戯画』や北斎などDNAとして現代にも表現に受け継がれています。

 これから何年もしないうちにデジタル漫画界の手塚治虫と呼ばれたりする、この世界でものすごい表現ができる、若い方に影響を与える作家さんが増えるのではないかと思います」

一次審査を通過した20作品。公開審査の結果、『オレの偉大なる野望』(落合マハルさん作)が最優秀作品に選ばれた

―― 最近は、すべてデジタル作業で漫画やイラストを発表する作家さんが増えました。

ちばてつや 「作品を見ていて非常に表現力が豊かなので、自分も漫画家なんだからこれくらいのことはできるようにならねばと思いました。ときどき自分も学生に混じって一緒に勉強し、使えるようになろうと努力はしているのですが、なかなか難しいですね。マンガ専攻生の中にも、デジタルで制作してpixivなどネットに投稿する学生さんがいますよ」

―― ちば先生の作品は電子書籍化される機会が多く、先生ご自身もサイトで漫画を配信されていますね。

ちばてつや 「電子書籍で今後自分の作品を配信していくなら、カラーにしないと寂しいなと感じています。最近は一部デジタルなんです。ペン入れは自分でアナログで描いて、トーンや枠線などは大学の学生さん、着色は嫁さんに手伝ってもらっています。

 彩色も絵の具で、まだデジタルの門をちょっと開けたくらいなんです。せっかく自分にはにいろんなコンテンツがあるのに、その辺にある道具でしかまだ作品を作れていない。有名な先生たちがデジタル化を始めているので、自分もチャレンジしたい」

「作品を選ぶのは読者であってほしい」(ちば氏)

―― 国内では問題なく流通している漫画作品が、国外のサービスにおいては次々に販売停止になるなど、電子書籍では“売り場の制限”を越えて、そもそも“売り場に置かれない”という状況が発生します。デジタル媒体の表現規制については、どのようなお考えをお持ちですか?

「漫画を作る側は、読者層に合わせて表現方法を考えながら描いたり編集したりしているので、基本的に政治家や官僚の判断でこれは良いとか悪いとか決められるのは怖い」(ちばてつや氏)

ちばてつや 「表現する立場としては、できるだけ表現は自由であってほしいと思うし、作品を選ぶのは読者であってほしい。

 たとえば暴力だとかSEXだとか、そういう表現が誰にでも見られるのは問題があるけれど、ただそれだけの表現では読者に飽きられてしまうし、すぐに慣れてしまうので『もうこれは読まない』と読者が自分で判断できる。

 戦前の検閲のように、表現の自由をすべて奪われると、とんでもない方向へ行ってしまう。すでにある作品は反対しやすいのですぐにクレーム対象になりがちだけど、そういう時代になってほしくないです」

―― 公開アフレコで収録された音声は受賞作と共にTSUTAYA GALAPAGOSで無料公開されます。電子書籍リーダーのGALAPAGOSで受賞作品を読んでみた感想は?

ちばてつや 「すごいですね。紙媒体と違って文字も大きく見えるし、目も疲れない。手の動きに反応して紙のようにめくれるので、自分のペースで読める。こういうのができてくると、来年のデジタルまんが甲子園が楽しみです。音や動画も入るそうで、いろんな表現ができるみたいだし、今後の電子書籍がどうなるのか楽しみです」

―― 最後に、未来のクリエーターの皆さんへひと言お願いします。

ちばてつや 「漫画を創作するのは非常に孤独な作業です。すぐに自信をなくすし、とても忍耐がいるし、辛い作業が多いので“漫画は我慢”だと思っています。

 我慢して我慢して、それですばらしいものができ上がったら、あっという間に単行本が売れたりメディア展開されたり、世界中で翻訳されたりと、すごいエネルギーを持っている作品になる。だから本当にやりがいのある仕事なので、苦しいことがあってもくじけないでがんばって、自分の世界を作って世界に発信してほしいと思います」

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