5GHzでQSVが動く動く!
今回は「TMPGEnc Video Mastering Works 5」(以下、TVMW5)を使い、Virtu環境下でのエンコード速度を調べてみた。ソース画像は再生時間およそ30分、解像度1920×1080ピクセルのH.264動画。これをTVMW5の「モバイル向けMPEGファイル」から「iPhone4」用「960×540ピクセル」の1パスVBRでエンコードしている。比較用として、GeForce GTX 580のCUDAを利用したエンコード処理と、CPU倍率を50倍に設定した状態でQSVでのエンコード処理もテストした。
結果はグラフの通り、Virtuの存在がエンコード処理に及ぼす影響はほとんどないといっていいだろう。QSVによるエンコード処理は元々優秀だが、さらにP67譲りの倍率アップによるオーバークロックを追加すれば、さらに高速化できる。「QSVは1パスだから画質云々……」はさておき、スマートフォン等での動画閲覧用にまとめてエンコードしたいときには、ほとんどオーバークロックできないH67よりも魅力的な選択肢であることは間違いない。
オーバーヘッドは意外に小さい
次にVirtu利用時と非利用時で3D性能はどう変化するのかチェックしてみよう。今回は「3DMark11」と「Alien vs Predetor 2 Benchmark」(AvP2)のほか、「Crysis2」でも計測してみた。Crysis2は画質「エクストリーム」「V-Syncオフ」にしたうえで、Frapsにより手動で計測した。AvP2は画質最高の設定で統一している。
Virtuを経由する分、確かに3D性能は下がるが、fpsの差はごくわずかで体感できるほどではない。高性能GPUほどオーバーヘッド(余計にしなければならない作業時間や負荷)の割合が大きくなるため不利ではないかと予想していたが、フタを開けてみればハイエンドGPUだから遅くなるという印象はなかった。
ビデオカードの性能をフルに活かすにはd-mode、併用を目指すならi-modeを使うのがベストとなるが、個人的には“毎回後ろに回ってケーブルの繋ぎ替えなんか面倒臭い”というスタンスなので、わずかの性能の目減りならi-mode一択でいいのではないかと考える。
ソフトとしての完成度は……
Virtuの設定は非常にシンプルだ。メイン画面でOnにしておけば、ゲームが起動すると自動的に最適な描画が提供される。デフォルトでは画面左上にVirtuのロゴが表示される設定になっているため、動作状況も把握しやすい。
どのゲームやアプリでビデオカード側のGPUを使うかは、Virtu側にアプリ名を登録することで制御できる。ただし、この登録機能が曲者で、今回試したバージョン(1.1.101.16618)ではアプリを新規登録すると100%の確率でVirtuが落ちて起動しなくなる。これを回避するにはユーザーのホームディレクトリに記録された.xmlと.iniファイルを直接編集するしかなかった。
さらに、今回テストした限りでは「Radeon環境でのQSVとの両立」はできなかった。BIOS設定等に関係なく、iGPU側から出力するとRadeonは“存在しない”と判定される(Catalyst Control Centerも起動しない)。相性問題なども考えられるが、いずれにせよ、現状のVirtuでは一般ユーザーに広く利用をオススメできる完成度ではないことは確かだ。ASUSTeKがVirtuを任意インストール扱いにしているのは、このあたりの事情によるのかもしれない。
今後の改善次第では大化けするかも!?
以上のように、現状のVirtuは残念ながら一般ユーザーにオススメできるシロモノではないのだが、バージョンアップによって挙動が改善されるという期待を前提に話をすれば、QSVとビデオカードを同時に便利に活かせるソリューションとして、実に面白いものに仕上がっている。動画のエンコードとゲームをバランスよく楽しみたいなら(現状はGeForce限定だが)導入を検討してもいいだろう。
(次ページへ続く)
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