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インテル、第2世代Core vProプロセッサー搭載プラットフォームを発表

モバイルで事業継続!第5世代のvProが目指すもの

2011年05月11日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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5月10日、インテルは企業クライアント向けプラットフォームであるvProの最新世代を発表した。登場した当初はデスクトップPCがメインだったが、最新のvProでは完全にノートPC中心に移行した感がある。

モバイル中心に転換してきたvPro

 vProが最初に登場したのは2006年だったというが、当初はデスクトップPCのみの対応で、発表時には「日本企業ではノートPCの利用比率が高い」などと指摘されていたものだった。その後、2007年には対応範囲がノートPCにも拡張され、毎年着実な進化を繰り返し、今回の発表がvProとして5世代目となる。プロセッサーは当然ながら最新の「Sandy Bridge」世代にアップデートされ、さらに本来の中核機能である運用管理やセキュリティの面でも強化が行なわれている。特に今回は大規模な震災を経験した後ということもあってか、モバイルコンピューティングのメリットが強調され、主役となるプラットフォームはデスクトップPCから完全にノートPCに切り替わった印象が強い。

インテル 取締役副社長 宗像 義恵氏

 まず概要説明を行なった取締役副社長の宗像 義恵氏は、主要先進国を対象にした調査における「労働生産性と従業員1人当たりのPC投資」のデータを紹介し、「労働生産性とPC投資額には相関が見られること」「日本の労働生産性は決して高くはなく、PC投資額も相応」といった現状を指摘した。とはいえ、同氏は同時に、「日本市場では企業内クライアントに占めるノート型の比率は国際的に見てもかなり高いが、それがモバイルコンピューティングのために利用されている例は少ない」とも指摘した。

PCへの投資が生産性に影響を与える

モビリティを推進するインテルの取り組み

 震災直後の交通事情等が不安定な状況で、インテルは在宅勤務に切り替えたそうだが、この際に社員は仕事に利用していたそれぞれのノート型クライアントを持ち帰り、オフィス以外の場所で通常通りの業務を遂行したという。つまり、オフィスへの出社を控えた方がよいと考えられる状況においても業務自体は通常通り止まることなく遂行できたわけで、同氏はこの状況を「社員がどこにいても事業が止まらない、事業継続が実現できる」と表現した。

 とはいえ、多くの企業でノートPCの社外への持ち出し禁止は、数年前に繰り返し問題になった「移動中のPC紛失による機密/個人情報の漏洩事件」を背景にした対策でもある。そこで、新しいvProでは従来のセキュリティ機能をさらに強化し、PCを紛失した際にはリモートから強制的にシャットダウンして再起動も禁止できる「インテル・アンチセフト・テクノロジー」やハードウェアレベルでのデータ暗号化、リモートからのデータ消去などの機能が実装されており、「いつでもどこでも安全に使えるコンピュータ」になっているのだという。

新世代vProの機能面での特徴

 続いてマーケティング本部の徳永 貴士氏が新世代vProの特徴について紹介を行なった。同氏は、「モビリティを支援する技術革新」として、「電力効率と省電力」「情報漏えい対策」「個人認証」「運用管理と遠隔サポート」の4つのポイントを紹介した。

インテル マーケティング本部 徳永 貴士氏

 まず電力管理に関しては、初代のvProが登場した2006年時点で企業内で主流だったデスクトップPCに比べ、2006年のvPro対応デスクトップPCでは1/4近い消費電力量で済んでいたという。これは主に、使用していないときにはシャットダウンしたり省電力モードに移行するといった、リモートからの集中管理による運用管理機能によるものだ。そして、この時のvPro対応モデルに比べて2011年モデルのvPro対応デスクトップPCはさらに1/3程度の消費電力になり、2011年モデルのvProノートPCはデスクトップの6割程度の消費電力だ。

モビリティを推進する4つの技術革新

省電力の効果と運用管理

 電力効率の面では、デスクトップに対するノートPCの優位は明らかで、これも今後vProが対象とする企業内クライアント市場の中心がノート型になっていくという理由の1つになるだろう。

 情報漏えい対策としては、NTTドコモによるソリューションが紹介された。ノートPCの内部に通信モジュールを内蔵することで、「いつでも、どこでも」というドコモのネットワークの強みと、リモートからアクセス可能でありさえすれば詳細な運用管理が企業内の管理者から遠隔で実行できるvProのメリットの組み合わせが実現している。

 また、個人認証に関しては、ワンタイムパスワード生成のためのハードウェアトークンの機能がPC内部で実装可能になっているという。もっとも、これに関してはハードウェアと独立したハードウェアであることのメリットもあると思われるのだが、この分野のリーディングカンパニーと目されるベリサインによるサービス提供のデモが行なわれた。最後の運用管理機能については、「リモートKVM」機能によって、BIOSレベルの画面から遠隔操作が可能だといい、サーバー並の遠隔管理機能が実装されているようだ。

 vProが実現する機能は多くの企業ユーザーにとっては魅力的なものだと思われる。かつてはミッドレンジ以上の高級モデルを中心としたvPro対応も最近ではかなり裾野が広がってきており、コスト面を気にするユーザー企業にとっても導入しやすいモデルが豊富に提供されるようになってきているのも事実だ。

新世代vProへの対応を表明したパートナー各社のPCの展示

 とはいえ、vProの機能を活用するにはサードパーティのサービスとの組み合わせが前提になる部分が多く、その分のコスト負担について気にするユーザー企業もいると思われる。パートナーとの協業によって優れたソリューションを実現していく、というのがインテルの基本的なスタンスである以上、「vPro対応PCを買いさえすれば」という単純な話にならないのも仕方のない面はある。ただ、ユーザー企業にとっての導入の敷居をさらに下げていくためには、パートナーのサービスまで含めたトータルでのシステムコストを透明化していく必要もありそうだ。

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