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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第54回

ニコ動に住むドラムの天才、その名は「ショボン」

2011年04月23日 12時00分更新

文● 四本淑三

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初めて叩いたハイハットは鍋のフタ

Image from Amazon.co.jp
SINGLES

―― ドラムはいつ頃からやっていたんですか?

ショボン 習い始めたのは13歳だったんですが、初めて触ったのは幼稚園の頃でした。当時、爆風スランプの「ランナー」がカッコ良くて。近所で花火大会があって、ステージのバンドがランナーを演奏するのをうちの爺ちゃんがビデオに撮っていたんですけど、その画像にはドラムしか写っていなくて、これでバンドの音全部出るんだ、すごいなコレ! と。

―― わはは。そんなわけないですけどね。

ショボン それを真似しようと思って、鍋を並べたり、フタを吊るしたりして、菜箸で叩いてたんですよ。すると鍋もフタもボコボコになっちゃうので、爺ちゃんが中古のドラムセットを買ってきてくれて。水泳から帰ってきたら、なぜかドラムセットが置いてあったんです。

―― 実はいいとこのボンボンとか?

ショボン いえいえ、農家の長男です。自分は東北出身なんですけど、周りが田んぼしかなくて、隣の家が100メートル位離れているんです。だから家の中の座敷に普通にドラムを置いていました。家族はうるさかったと思うんですけど。

―― それはいい環境じゃないですか。都市部だとエレドラのヒット音でも気を使うから。

ショボン でも当時は8ビートなんか知らなかったんで、一個一個鳴らしていたんです。それが色んなアニメを見るようになって、オープニングテーマなんかを聴いて、一発ずつ叩くんじゃないんだってことにやっと気づきました。ある時、小学校の先生の家に行ったらX-JAPANのCDがあって、借りて聴いたら未知の音がたくさん入っている。

―― なんだか「スウィング・ガールズ」みたいな展開だなあ。

ショボン バスドラの音なんかドコドコドコドコって。今ならツインペダルだって分かるんですけど、当時は片足でやっているものだと思って、ずっと片足で練習していたんですよね。

―― まさかそれでできるようになったとか?

ショボン さすがにそれはないんですけど。それで中学校に入り、親から言われてヤマハ音楽教室に通ったんです。すごくいい先生に当たって、そこから真面目に練習し始めたんですね。


好きなドラマーは?

―― どんなドラマーが好きですか?

ショボン スーパーサイヤ人が好きですねー。

―― ってどんなドラマーですかそれは?

ショボン オーストラリア出身のヴァージル・ドナティですね。あとはアメリカ人のヴィニー・カリウタ。フランク・ザッパとかで演ってました。自分の心の先生です。

ヴァージル・ドナティ : 1958年生まれのオーストラリア人ドラマー。スティーヴ・ヴァイやリング・オブ・ファイア、元ドリームシアターのデレク・シェリニアンらと結成した自身のグループ、プラネットXなどで活動。

ヴィニー・カリウタ : 1956年生まれのアメリカ人セッションドラマー。22歳でフランク・ザッパ・バンドに参加し、驚異的なプレイで名声を確立。その後、ジョニ・ミッチェル、クインシー・ジョーンズ、スティングなどジャンルを問わずプレイ。最近ではジェフ・ベックと若手女性ベーシスト、タル・ウィルケンフェルドとのセッションが有名。

―― ヴィニー・カリウタって[TEST]さんのセンパイじゃないですか、バークリーの。

ショボン ははは。そう、大先輩ですね。ヴィニー・カリウタは全部の音に神経が通っていて、どんなに難しいことをしても音が潰れない。恐ろしいですよ。そこに気づいたのが、ここ2年くらいです。あと勉強になるのは、スティーブ・ガッドとデイブ・ウェックルですね。

スティーヴ・ガッド : 1945年生まれのアメリカ人セッションドラマー。マンハッタン・ジャズ・クインテットやスティーリー・ダンなど数多くの名演を残す。ジャンルを問わず、あらゆるシーンで尊敬を集めるドラマーの鑑的存在。

デイブ・ウェックル : 1960年生まれのアメリカ人ジャズ・フュージョン系ドラマー。チック・コリア・エレクトリック・バンド/アコースティック・バンドでの超絶テクニックを駆使した演奏が有名。

―― 僕はショボンさんの音とプレイを見て、テリー・ボジオやニール・パートのスタイルをイメージしていましたけど。

ショボン ああ、2人とも大好きです。タム回しなんかもそういうところはあるかもしれないし、それは大きいですね。僕が最初に影響を受けたのはドリームシアターのマイク・ポートノイで、彼はニール・パートをリスペクトしていて、自分もRUSHはよく聴いていましたし。

テリー・ボジオ : 1950年生まれのアメリカ人ドラマー。1975年からフランク・ザッパ・バンドに参加。その後、プログレバンドのUK、ニューウェイブバンドのミッシングパーソンズで活動。ジェフ・ベックやスティーヴ・ヴァイなどセッションワークも数多い。

ニール・パート : 1952年生まれ。カナダのハード/プログレッシブ・ロックバンド、ラッシュのドラマー。あゆる音楽スタイルを叩きこなすテクニックを持ち、同バンドのほどんどの楽曲の作詞を担当。

マイク・ポートノイ : 1967年生まれ、バークリー音楽大学卒。アメリカのプログレッシブ・メタル・バンド、ドリームシアターのドラマー。2010年に同バンドを脱退。



▲ なんとギター以外はショボンさんが演奏するドリームシアターのカバーバージョン!

―― ニコニコ動画に上手いと思うドラマーはいますか?

ショボン あつしさんという方ですね。あと、ハバネロ炒飯も。今では自分のお兄さん的存在なんですけど。あとはアンパンマン。あの人は本当にすごく上手い。まぁ、今では友達ですけど。



―― スティックの握り方はスタンダードですよね?

ショボン トラディショナル・グリップですね(マーチングバンドのスタイル。左右で握り方が違う)。元々マッチド・グリップ(左右とも手のひらで握る)だったんですが、自分の好きなドラマーがほとんどトラディショナル・グリップだったので、半年前から直したんです。

―― 最初は狙い通りにヒットしなくて大変だったでしょう。

ショボン リムショット(タイコのヘッドと枠を同時に叩くこと)の成功確率は50%くらいでしたね。2回に1回は「カツン」っていうんですよ。それで「すみません、こっちでやらせてもらえます?」って謝って。本番には使い物にならなかったですね。

―― 今回ミスショットなかったじゃないですか。

ショボン でも4発ありました。

―― あの長丁場でよく覚えていますね。

ショボン 自分がミスしたところと、演奏中に気が抜けたところは全部覚えてますね。3回気が抜けましたね。こないだのライブは、秒数にすると0.5秒くらいなんですけど、抜けた瞬間がありました。疲れというより、集中力の問題です。

―― リムショットが多いとスティックの消耗早くありません?

ショボン 自分はスティックに重さを乗せないようにしているので。止める感じ。そういう練習をするようになって、長持ちするようになりました。木目が悪いとすぐに割れるので、買うときは入念にチェックします。

―― 好きなモデルあります?

ショボン 今はヴィックファースというメーカーの「5A」というのを使っています。チップの形も太さも重さもいいですね。

(次ページに続く)

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