メモリー編3回目では、SDRAMの登場からDDR3-SDRAMまでの進化をおおまかに解説したが、あくまで「メモリーチップ」そのものについての解説に終始した。しかし、PCに搭載されるメモリーはチップ単体ではなく、「DIMM」などのメモリーモジュールを使うのが一般的である。今回はメモリーモジュールの進化について解説したい。
DIPからSIP、そしてSIMMへと発展した
初期のメモリー
もともと最初のPC「IBM PC」が世に出た頃は、「DIP」(Dual Inline Package)というパッケージでDRAMチップが実装されていた。
DIPは写真のように、長細いプラスチックモールド(金属やセラミック製もあった)の両側に端子が突き出している半導体パッケージだ。これをそのまま基板に半田付けする場合もあるし、写真のようにDIPソケットを介して基板に取り付けることもある。
最初のIBM PCの場合は、マザーボード上に9つのDRAMが半田付けされて16KB分のメモリーを構成していた(パリティビット用1byte分を含む9bit構成)。そのほかに27個分のDRAM用DIPソケットが用意されていて、ここにメモリーチップを装着すると最大64KBになるという構成だった。
当時はこれでも特に困らなかった。しかし、のちにPC/AT互換機などが数多く登場してより多くのメモリーを搭載するようになると、「もっと簡単に増設できるようにならないか?」というニーズが当然出てくる。これに応えて登場したのが「SIP」と「SIMM」である。
SIPは「Single In-line Package」の略で、ようするにDIPの足が片方だけしかないタイプのICパッケージに使われるものだ。複数のメモリーチップをまとめて基板上に実装して、そこから足を生やした「SIPモジュール」というものが登場した。SIPモジュールには以下のような利点と欠点があった。
- SIPモジュールの利点
- ・基板に垂直に実装できるので、実装面積を最小に抑えられる。
- ・従来のDIPと同じ構造のソケットで接続できるので、実装が容易。
- SIPモジュールの欠点
- ・メモリーチップと基板の重さに比べてピンが脆弱で、装着後に折れ曲がったり、破損しやすい。
- ・そもそもピン数が多いので、装着が難しい。
そこで、SIPに比べるとやや実装コストは上がるものの、機械的強度に優れた「SIMM」(Single In-line Memory Module)が登場することになった。
この連載の記事
-
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ -
第765回
PC
GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ -
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 -
第757回
PC
「RISC-VはArmに劣る」と主張し猛烈な批判にあうArm RISC-Vプロセッサー遍歴 - この連載の一覧へ